「LIFE SHIFT」を読んだ
2025/05/27
寿命が伸びて100年生きる時代にこれまでの常識はどう変わるか?「LIFE SHIFT」は長い人生の受け止め方が書かれたベストセラー本。面白かったところを簡単にまとめる。
人生が長い時代ではお金とは違う「無形資産」が重要になってくる。無形資産には「生産性資産」「活力資産」「変身資産」の3つがある。生産性資産は仕事を効率的に行えるスキル、活力資産は肉体的・精神的な健康。友人や家族との良好な関係性もここに含まれる。変身資産はちょっと面白くて、自分について知っていること、多様な知り合いがいること、新しい経験にオープンなことなどが挙げられる。確かにこれらの要素がある人はどんな状況変化にも適応できる。ひとつの専門性に固執するのではなく、変わりゆくトレンドに身軽に乗れる人が活躍する時代になる。
コミュニティに関する考察も面白い。自分と同様のスキルと知識を持つ人たちとの関係を深めるために多くの時間を費やし、その人たちと直接対面して会話する時間も割かなくてはならない。高度な専門知識が育まれ、共有されるためには、そのような時間が必要なのだ。インターネットで調べものは完結し、誰にも会わずに家でひとりで仕事ができる時代。しかし言語化されにくい世の中の流れ、暗黙知はコミュニティの中でしか熟成されない。会社でチームとして働いたり、同じ志を持つ人たちとコミュニティを築いたりするのはこの点で意義がある。例えば今どきの海外カンファレンスはすべてのセッションが後にアーカイブが公開され、わざわざ行かずとも情報のキャッチアップは簡単にできる。高い飛行機代やホテル代を出してまで現地参加する意義はないように思えるが、その場の高揚感は実際に参加してみないと体感できない。この機能が発表されたときに会場が沸いたとか、世間ではニッチとされていてもその会場の全員が信じていたとか、そういう空気感が自分の知覚に影響を与える。論理的な説明は難しいがこれは確かにある感覚だと思う。
ロールモデル考
2025/05/25
大学時代、「社会に出たらロールモデルを見つけよう!」という言葉をよく耳にしていた。今の自分に「この人こそがロールモデルだ」と言える人はいない。でもそれで良い気がしている。
朝井リョウの「スター」という本がる。その中に、かつては「スターといえば?」と聞くと何人かに収束していたが、現代ではみんな異なる人物の名前を挙げるという話がある。確かに昔はキムタクなどのテレビスターがいたが、今誰かと問われると分からない。メディアがテレビからYouTubeに移行したように、視聴者は細分化された自分の好みにあわせて好きなものを観る。チャンネル登録数100人のYouTuberが自分のスターだと言う人もいるかもしれない。一人のスターではなく、各々が自分のスターを持っている。
現代に合っているのは、一人のロールモデルを持つよりも「複数のマイクロロールモデル」を持つことかもしれない。ロールモデルと聞くと重たいが、この人の生活スタイルは良い、この人の話し方は良い、この人のようにWebサービス開発をしたいという気持ちはある。一人に絞るのではなく、分野ごとに自分の目指す像をその人の背中を借りて作れればよい。
習慣は場所に紐づく
2025/05/22
習慣は場所に紐づく、とは習慣本の名著「複利で伸びる1つの習慣」にある一節。例えば普段寝転んでテレビを観ているソファに座って仕事をするのは難しい。人は場所と習慣を紐づける修正がある。
一時期部屋のレイアウトの都合上仕事部屋のモニターでゲームをしていた。このモニターは仕事中も使う。こうなると仕事中にゲームの電源をつけたくなり、集中が難しくなってしまう。そういった場合の対策も本の中で紹介されている。それは「その行動を面倒くさくする」こと。ゲーム機の場合はコード類を外し、棚の引き出しに入れてしまう。本当にゲームしたければ棚から出せばすぐできるが、仕事中はゲームのことを考えなくてすむ。
家の中だけでなく外にも同じことが言える。例えばパソコンが出来るお気に入りのカフェを持つ。そこは適度に座席間の距離が離れていて、パソコンで長時間作業をしていても店員さんは放っておいてくれる。日常のリズムを崩して仕事に身が入らなくなるとき、そのカフェに行くと良い仕事ができて自然と整うことができる。
社会人初期に読んでよかった本
2025/05/21
社会人になりたての頃、右も左も分からず戸惑うことばかりだった。そんな時期に出会ってよかったと思える本がいくつかある。今回はその中から特に印象に残っている3冊を紹介したい。
まずはデール・カーネギーの「人を動かす」。タイトルだけ見るとリーダー論やマネジメントの本のように思えるが、実際は「どんな人間を目指すべきか」という根本的なテーマが語られている。例えば、部下が大きなミスをしたとき、普通なら叱責してしまいそうな場面で、カーネギーは「これだけのミスをしたなら彼はもう間違えない」と続投させる。自分には到底できそうにない胆力だが、人としての魅力や信頼の築き方について深く考えさせられた。
次に「社会人1年目の教科書」。仕事を始めたとき、学生時代とは何もかもが違って戸惑うことが多かった。自分はまず誰かのやり方を真似てみて、そこから自分なりに取捨選択していくタイプ。この本は社会人として気をつけるべきポイントを肩肘張らないやさしい言葉で教えてくれる。なかでも印象に残っているのが「オフィスを移動する際は廊下ではなく机の間を歩け」という章。働いている人たちの雰囲気や空気感を感じ取ることの大切さを説いていて、なぜかずっと心に残っている。会社がフリーアドレスになるまではよく実践していた。
「HARD THINGS」を読んだ
2025/05/19
本棚を整理していたときに「HARD THINGS」を見つけたので読んでみた。2015年発刊で長らく積読になっていた一冊。ビジネス書の名著とされている本だけど、改めて読んでみると組織や仕事について考えさせられる部分が多くて面白い。
特に印象に残ったのは、「良い組織と悪い組織の違い」について書かれていたところ。良い組織では、人々が自分の仕事に集中し、その仕事をやり遂げれば会社にも自分自身にも良いことが起こると確信している。
誰もが朝起きた時、自分のする仕事は効率的で効果的で、組織にも自分にも何か変化をもたらすとわかっている。それが、彼らの仕事への意欲を高め、満足感を与える。
「嫌われた監督」を読んだ
2025/05/14
「嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか」を読んだ。中日ドラゴンズの監督に落合博満が就任する。野球ファンが喜ぶようなロマンは追わず、現実主義にひとつずつ積み上げてチームを強くする。監督を勤めた8年間で日本シリーズ進出や優勝など好成績を収めるが、なぜかマスコミや経営チームから厳しい目線を浴び、やがて退任することになる。落合はファンやマスコミを喜ばせるようなサービストークはしない。本書は落合と近しい選手やコーチに取材し、周りから落合という人物を浮き彫りにしていくノンフィクションとなっている。
野球から遠い人生を送ってきた自分も落合の名前は知っている。子供の頃によく名前を聞いたし、社会人になってからはコーチングや育成などビジネス的な文脈での引用によく出会った。落合の考え方は成果に向けてまっすぐなのでビジネスの場面で参考にしたい気持ちもよくわかる。ただエンターテイメントとしてのプロ野球にとっては盛り上げが物足りない場面も多く、やがて球団側とのすれ違いが大きくなっていく。
たとえば完全試合間近のピッチャーでも交替させる。ファンとしては歴史的瞬間に立ち会いたいので続投させてほしいが、勝つための最善を取るのが落合監督。ただ非情な人物の決断という感じではない。選手心理ももちろん分かりつつ、それでも自他の感情よりも「勝利」を優先順の上に置いているような印象を受ける。印象的だった一節を紹介:「心は技術で補える。心が弱いのは、技術が足りないからだ。」
Smart Band 9を買った
2025/04/30
「Xiaomi Smart Band 9」を買った。スマートウォッチのひとつだがApple Watchに比べると画面が小さく、値段も5,500円と良心的。歩数計、心拍、ワークアウトの記録など必要な機能は揃っている。Smart Band 6のタイミングでデビューしてから気に入って着けており、古くなってきたので新しく出ていたものに買い替えた。
散歩の歩数計測、水泳のワークアウト記録なども便利だが、地味に一番使うのがアラーム機能。Smart Bandでは指定した時間に振動で起こしてくれる。体を揺らされると人は起きる。目覚ましのやかましい音で起きるよりも気持ちよく起きれるし、最近はiPhoneを寝室に持ち込まない生活をしているのでその点でも便利。あとは瞑想する時に3分タイマーとして使ったり、ちょっとした場面で役に立つ。Apple Watchを着けていた頃は傷がつかないように、失くさないようにと気を付けていたがこれは安価なので適当に扱える。買い替え前のモデルよりも液晶がコンパクトになったのも嬉しい。見るのは時計くらいだし、小さくてシンプルなほど良い。
Smart Bandはかなり売れているらしい。以前飲み会に参加したとき、そのテーブルにいる6人中4人がこのウォッチを着けていた。話を聞いてみるとサウナにも持ち込めるらしく、サウナ好きはよく持っているとのこと。自分はサウナは行かないがプールやお風呂もずっと着けっぱなしで過ごしている。それでも本体は傷もなくずっと動いているのでかなり丈夫だと思う(ゴムのベルト部分はそこそこ切れる)。
「本を出したい」を読んだ
2025/04/28
「本を出したい」を読んだ。本が出版されるまでの流れ、企画書の作り方、本を出したい人がどうすれば良いかをまとめた一冊。ネットには意外とこういう情報がないので体系的にまとまっていて面白い。自分もZINEを作ったり(超簡単なもの)、この日記を本の形にしようと考えたことがあったので興味があって読んだ。
まず、本の出し方として大きく2パターンある。ひとつは著者のネームバリューで出すもの、もうひとつはテーマ先行で決まるもの。前者は何かで有名になった人が出すものなので対象外。後者のテーマ軸のものは、まず面白そうなテーマが決まり、次にそのテーマで書けそうな人が探される。そのテーマでネットを調べた時に自分の名前が出てくるようになっているとチャンスがある。Xでもnoteでも自分のホームページでも媒体はなんでも良い。「そのテーマに通じている人」という印象を与えられると声をかけられる可能性が上がる。
良い文章を書くポイント。読んだ人が著者の見聞きしたものを追体験できるように書くこと。景色や様子などを細かく伝えられると読書体験が豊かさになる。そのためのコツとしては「登場人物が見た順に文章を並べる」こと。理路整然と並べるのではなく、目にした順序で物事を描くことで臨場感が出る。
『「謙虚な人」の作戦帳』を読んだ
2025/04/27
『「謙虚な人」の作戦帳』を読んだ。日本でも話題になった『「静かな人」の戦略書』の続編といえる内容。喋りが上手く前に出たがる人が有利な世界のように思えるが、その中で引っ込み思案の人たちはどう戦うか。静かな人の〜は以前読んで面白かったので今回の新作も読んだ。
謙虚な人の脳内はどうなってるのか?それはただ目立つのが苦手なだけでなく、リスクを察知したり、完璧を求めたりする性質のために前に出づらくなっている。控えめであることが悪いわけではないが、ビジネスでは自分の成果を主張したりサービスをアピールしたりすることが必要な場面もある。そんな時の心構えを本書は教えてくれる。
例えば「完璧を求めすぎるのを辞める」。調査ではCEOの80%が自身の力不足を感じているらしい。外からは上手くいっているように見える人でも踏ん張っている。自分のコントロールできるものとできないものを分けて考える。自分の作った資料が間違えていればそれは「失敗」だが、そのプレゼンの後別の会社が選ばれたとしたらそれは「確率」。自分のできる範囲でベストを尽くそう。完璧な人を見ると何か騙されているのではないかと不安になる。多少失敗したり抜けている点がある方が人間らしい。「人は自分に完璧な姿を求めている」と思う必要はない。
「ビジネスを育てる」を読んだ
2025/04/22
「ビジネスを育てる」を読んだ。1987年に出版されてから50カ国以上で販売されているスモールビジネスについての本。書かれたのは35年以上前だが内容はまったく古さを感じない。例えばかつては大企業が「規模」で戦っていたが近年は「個々人への最適化」が焦点となっているという話。最新のビジネス書でもまったく同じ内容が紹介されている。
スタートアップの経営チームとして頭を使っていた時期があり、その頃は会社の成長についてよく考えた。シリコンバレーには「T2D3」という言葉があり、これは3倍成長(Triple)を2年連続、そして2倍成長(Double)を3年連続でしよういうひとつの指標。出どころは不明だが急速な成長は投資家からは歓迎される。海外の有力スタートアップと渡り合うためにはこれくらいを目指さないといけない、という考えがあるのかもしれない。
本書ではそんな風潮とは真逆のことが書かれている。成長率が10%だろうと150%だろうと関係ない。そんなことは問題じゃない。他人と比較してはいけない。メディアが好んで騒ぐ「スピード成功」なんて忘れることだ。大切なのは、成長率の数字ではなく、成長があなたにとって心地よいかどうかだ。自分のサービスを見れば「もっと広がりそうか」「十分広がったので作り込むタイミングか」などは判断できる。市場の平均値と戦ったりメディアの話題に影響されると外部からの目線でサービスを見ることになる。今じゃないタイミングでアクセルを踏んでしまえば疲弊して、逆に寿命は短くなる。