ロールモデル考
大学時代、「社会に出たらロールモデルを見つけよう!」という言葉をよく耳にしていた。今の自分に「この人こそがロールモデルだ」と言える人はいない。でもそれで良い気がしている。
朝井リョウの「スター」という本がる。その中に、かつては「スターといえば?」と聞くと何人かに収束していたが、現代ではみんな異なる人物の名前を挙げるという話がある。確かに昔はキムタクなどのテレビスターがいたが、今誰かと問われると分からない。メディアがテレビからYouTubeに移行したように、視聴者は細分化された自分の好みにあわせて好きなものを観る。チャンネル登録数100人のYouTuberが自分のスターだと言う人もいるかもしれない。一人のスターではなく、各々が自分のスターを持っている。
現代に合っているのは、一人のロールモデルを持つよりも「複数のマイクロロールモデル」を持つことかもしれない。ロールモデルと聞くと重たいが、この人の生活スタイルは良い、この人の話し方は良い、この人のようにWebサービス開発をしたいという気持ちはある。一人に絞るのではなく、分野ごとに自分の目指す像をその人の背中を借りて作れればよい。
マイクロロールモデルは軽いのが良い。例えばSNSではその人の一面しか見れないが、それでも良い。マイクロロールモデルなら一面だけ見えれば良い。その面だけを参考にして模倣すれば良いから。そもそも完全なる憧れというのはなかなか上手くいかない。リアルで会っている先輩や同僚でも、その人のすべてを知ってはいない。仕事は素晴らしいけど家族を大事にしていないかもしれない。その逆で、職場ではあまり目立っていないけど他のシーンではかけがえのない存在かもしれない。
見えている一面からその背後にパーフェクトな像を勝手に補完するのではなく、ただ見えるその一面だけを参考にする。マイクロロールモデルは気軽に増やしていい。この人は話の聞き方が素晴らしいなと思ったら真似する。チャットの文章が爽やかだなと思ったら真似する。試してみて自分に合わなければ真似を辞める。いろいろ試していて自分に合うものがあればそれは続ける。こうしていくと自分の目指したい姿に少しずつ近づいていく。