Webサービスの行き止まりをなくす
このブログにちょっと手を入れて前後のポストへのリンクが表示されるようにした。Webサービスを作っているとこういう回遊を生む構造について考えることがある。そこで立ち止まらせず、次のアクションに繋がる何かを用意する。
そのサービス過ごしてもらう時間を長くすることが事業のキーポイントの一つとされる。例えばネットショッピングでは商品を見てもらうほど購入される可能性はあがるだろうし、SNSならもっと直接的に広告の表示回数が収益になる。可処分時間の奪い合いの時代とも言われる。余暇の時間をどう自分のサービスで過ごしてもらうか?消費者向けサービスではこの観点が重要視される。
ネットショッピングをしていて、何か目当ての商品を検索したくてキーワードを打つ。そこで希望するものがない場合、キーワードを変えて再検索する必要があるがそれは面倒臭い。スマホで文字を入力するのが手間に感じるのは、それが能動的な行為だから。ただ流れるものを見るような受動的なアクションならハードルは限りなく低い。そこで検索ワードから連想される商品を並べてみたり、別の検索ワードを提案してみたり、閲覧した商品に関連しそうなものを並べてみたりする。画面をスクロールして気になるものがあればタップする、だけであればほとんど受動的に操作できる。
検索にヒットする商品がひとつもないとき、検索結果の一番下までスクロールしたとき、何か打てる手がある。これらは今やっている作業がいったん終わり、次にユーザーが能動的に何かを起こす必要があるタイミング。つまり行き止まりの状態といえる。放っておくと離脱してしまう可能性が高いので、似た商品を出したりして間を繋ぐ。ソーシャルゲームなどが上手いが、ひと区切りできるタイミングで次のアクションを始めさせると長く使ってもらえる。滞在時間が伸びるのは事業者側としては願ってもないことだが、ユーザー的には意図せず長い時間をそこで使ってしまう場合もあり人類の利益になっているかは怪しい。ユーザーとして使う場合はこういう罠は避けるよう意識しておきたい。
リモートワークに関するNのこと
世の中のWeb企業は出社回帰がトレンドだが、ここでは個人から見たリモートワークについて。
自分の仕事はしやすいがチームのコラボレーションはかなり意識しないと生まれにくい。オフィスではいろんな役割の人が一緒に仕事していて、その交差によりアイデアが生まれる場合が稀にある。昔何かの本で読んだところではそういう"交差点"として最適なのは喫煙室や自販機近くで、たまたま顔を合わせ、喋っても喋らなくても良いという距離感が重要な要素になるらしい。一同会して交流しましょう!というのでは少し違う。リモートワークにおける会議は基本的に目的ベースになってしまうので、オフィス体験そのものの再現は難しい。
出社がないのは楽だが交流がないのは寂しい。自分は人と話すことでアイデアが生まれるタイプで、他の部署の人とたまにランチに行きたいが難しい。リモートならいつでも話せるが良い会話をするためにはその前段に信頼関係が必要。心理学用語にラポールという言葉がある。話し手と聴き手の間の信頼関係のことで、これがないとコミュニケーションは円滑に進まない。例えばお医者さんに病状を話したとき、目を見て頷きながら聞いてくれるのとモニタを見ながら耳だけで聞いているのとではラポールの形成具合が違う。その後同じ診断結果を告げられたとしても前者の医者からの方が受け入れやすい。リモートでもラポールは築けると思うが時間がかかる。これはその人を信頼できるかを判断するための情報が少ないため。細かい表情や身振り、喋る間合いなどの要素が画面越しでは伝わりにくい。この人にすべて話しても大丈夫だろうか?と勘繰りながらの会話には摩擦がかかる。
移動することで頭や心が動きやすくなるという説がある。在宅勤務は快適だが景色が流れない。電車に乗ったり歩いたりしてる時に見る建物、広告、人の服装、季節感から刺激を受けて頭が回る。体を動かすことは健康への貢献、頭のスイッチオン、公私の切り替えになる。気を抜くと仕事後もなんとなくパソコンを見ていてしまう。人は場所と行動を紐づける性質があるので、仕事と生活の物理的な空間を分けておくと切り替えやすい。
人と話してると共感を超えて同調してしまうときがある。画面越しだと自動的に一定の距離を置けるのは自分にはポジティブな要素。その場の勢いというのが良くも悪くも生まれづらいので、一度考えてから自分に落とし込めむだけの余白がある。相手がどう思うか気にしすぎると意思決定が捻れてしまうので、このあたり仕事にはプラスに働いている気がする。
良い日を増やす
「ゾーンに入る EQが導く最高パフォーマンス」を読んだ。集中したバッターは稀にボールが止まって見える。極限まで集中したその状態をゾーンと呼ぶが、ゾーンに入るの非常にレアで目指しにくい。本書ではその一歩手前、「オプティマルゾーン」を目指すことを推奨する。オプティマルゾーンとは「良い日を過ごせたな」と満足できている状態のこと。オプティマルゾーンはゾーンよりも具体的で目指しやすい。
どうすれば良い日を過ごせるか?一日の終わりに自分は全力を尽くしたと思えるように過ごす。大勝利でなくていい。重要な一歩でなくていい。ただ「自分にとって大事なこと」が捗ればそれで十分良い日だといえる。良い日を過ごせると精神的にも充実し、さらに良い仕事ができる。ゾーンに入って一発ホームランよりも、この良い日の連続を目指していく。
オプティマルゾーンに入りやすい条件もいくつかある。ひとつは人間関係が良好なこと。同僚に親切にしていると良い日になりやすい。次に、取り組む課題の内容。課題に全力を出せるかどうかは、自分の能力とのバランスよりも、課題への取り組み方を自分で決められるかどうかの自由度に関係する。最後に集中しやすい環境であること。深く没頭していると自然とゾーンに近い状態になる。注意散漫になる要素を減らし、マルチタスクを避けて目の前に没頭する。集中した状態では仕事のパフォーマンスだけでなく自分への自信が高まり、他人からどう見られるかの自意識から解放される。
オプティマルゾーンはEQと関連が深い。EQは心の知能指数で、チームや組織で働く上ではIQよりも重視される。その正体は自己理解と他者への共感で、自分の状態を適切に管理し周りを慮るマインドセット。毎朝早起きして長いランニングをしたり、感情に支配されて失敗した時を振り返って「次に同じことがあったらどうするか?」を考えたりする。心地よいと思える日の条件を知り、「今日は良い一日だったな」と思える日を増やすことを目指したい。
「思ったらいけない」ことはない
何かの事象を見たり考えたりすると心の波に石が投げられる。それが波紋となり感情が芽生える。怒りや嫉妬など負の感情が湧き上がることもあり、それは世間的には良くないとされる感情かもしれない。でもその感情は咎めなくて良い。どんな感情も自分の中から出るものは自分の感じ方である。
感情そのものを否定するのではなく、それがどう表出するかをコントロールする。表情、言葉、行動を制御する。どんなに激しい感情でもピークは発生から6秒らしい。なので6秒間ぐっとこらえてから行動する。余計なことを言ってしまったり、意図と違う形で伝わり他人を傷つけてしまうことが少なくなる。
社会的に、あるいは周囲との関係的に言わない方が良いこともたくさんある。でもそれを言葉にせずに周りに合わせていると自分を見失う。そんな時は文字に書けば良い。考えてることを書き出し、誰にも見せずにそっとしまう。自分がその時どんな感情になったか、何を思ったのか。人に話せずとも、自分の心中に書き留めておけばそれで十分だ。
周りをエンパワーする
Webエンジニアは他の職種と比べて個人単位でのパフォーマンスの差が大きい。それは過去に作ったものを再利しやすかったり、システムが複雑なため理解度によって仕事の進めやすさがまるで違うことなどに関係している。どこかで読んだ調査では人によって10倍くらい生産性が違うらしい。この数字は肌感とも近い。
ところで最近はチームでの開発が必要になるシーンが多い。技術は進化しており、シンプルになった部分もあるが複雑度は全体的にはあがっている。優れたサービスが溢れておりユーザーの期待値自体も高い。昔は仕事を楽にするツールがあるだけ有難かったのが、今では仕事が滑らかに進むよう連携機能が求められたり、使い心地の良いデザインが好まれたりする。システム障害を防ぐことも必要。基準の上がった当たり前品質を満たすのに一人では限界があり、チームでの協働に焦点が当たる。
チーム開発となると、個の力よりもチーム全体を押し上げる力が評価される。他のメンバーと比べて1.5倍活躍できたとしても、連携やコミュニケーションが不足していると周りのパフォーマンスを0.8倍にしてしまう。そうなるとチームとして大体マイナスになる。スキル的には多少劣っていても、周囲に良いパスを出せる人は重宝される。自分が0.8の力でも周りを1.1倍にできればトータルプラス。そういう価値の発揮の仕方もある。
良いパスとは何か。具体的には周りのメンバーの様子を伺い、必要な情報をオープンに置いておくこと。困ってそうな人を助けたり、自分が仕入れた知識をシェアしたり、チーム全員が働きやすい仕組みを整えたりすること。周りのために動いてくれる人がいると、それを見た他メンバーもそういう動きをするようになる。ポジティブなサイクルが回り、良い仕事ができるチームになっていく。