良いパサーになりたい

2025/04/08

「黒子のバスケ」という少年漫画がある。バスケ部の高校生が舞台だが、特別な能力を持つ5人が登場する。運動能力がめちゃ高い、相手のプレイスタイルをすぐ真似できるなどそれぞれの特徴を持つが、その中の一人である赤司という司令塔は予知能力を持つ。はじめは予知をもって敵チームの動きを読んでいた赤司だが、試合後半では味方への最高のパスを出すことに使われる。味方が最も欲しいタイミングや回転でパスを出す。究極のパスを受け取った選手は気持ちよくプレイできてゾーン(の一歩手前)に入る。

チームで仕事をしてる時、たまに赤司のパスのことを思い出す。相手が困っているタイミングで声をかける、質問に十分な形で答える、不安を抱く前に状況をシェアして落ち着いてもらう。一つ一つのやり取りは雑でも成り立つが、最高のタイミングや内容で渡せれば無駄なやり取りでエネルギーを消費せずに目の前のことに集中できる。仕事の内容だけでなくその意義やサービスの目指すところを伝える。優秀なチームであるほど自分の仕事が世の中の何に役立っているのかを気にするので、モチベーション高く取り組むことができる。こうやって周りがゾーンに入れるようパスを出すのが理想形。

最近はAIが急速に進化し、コミュニケーションする相手が人からAIに変わってきた。作って欲しいものを整理してAIにチャットする。AIが作ったものを見てズレがあったら指摘する。AIにはモチベーションという概念はないけど、良い指示を出せれば良いアウトプットを出してくれる。逆にまとまりのない指示では右往左往して逆に時間がかかってしまう。将来的には曖昧な指示でも完璧にこなしてくれるアシスタントが誕生してるかもしれないが、今のところは指示のレベルがそのままクオリティやスピードに繋がる。AIへの良いパスとは明確で簡潔、そして必要な前提情報を含んだ指示である。チームのメンバーが人からAIになっても、良いパスが求められることは変わらない。


手に馴染むサービスはフィードバックがデザインされている

2025/04/07

モードレスデザイン 意味空間の創造」を読んでいる。デザインについて書かれた本だが「明日から役立つ!」のような実践書ではなく、かなり抽象度の高い内容になっていてそれが良い。今まで読んだ本のなかでは「融けるデザイン」に近い気がする。ソフトウェアのデザインがどうあるべきか、そもそもデザインとは何なのかを深く思考する。

気になった箇所をいくつか書いてみる。ハードウェアには物理的制約があり、ソフトウェアには物理的な制約はないが論理的な制約がある。ここまでは良いが、実はソフトウェアにはもう一つ「認知的な制約」がある。論理的に正しい、論理的に可能なものであっても人間の認知能力を超えれば扱えない。「実現できてはいるが誰も使えない仕様」は認知的な制約を無視・軽視した結果生まれている。

デザインが磨かれるプロセスは反復的で、これは完成図をイメージしてそれに近づけていくような作り方とは根本的に異なる。実装して進んでみて微妙であれば壊す。部分的にではなく時には全体を作り直す。ある地点まで作って試し、その手触りにより次の地点が見えてくる。それを繰り返すうちに目指すところへじわじわ寄っていく。エンジニアリングもそうだがプロジェクトの見積もりを出すことはそもそも難しい。締切を守ることよりも少し伸びてもいいから磨き上げて提供する価値の質を担保する方が良い結果につながる。

我々の暮らす自然界はフィードバックに溢れている。手のひらで土を押せば凹み、その分の抵抗が自分に返ってくる。この感触や見た目、音などの知覚情報をもとにして世の中の理解が深まっていく。こうすればああなる、ということが学習されて扱うのが上手くなる。現状のソフトウェアはまったくその域に達していない。クリックして意図せぬ挙動が発生したり、同じボタンでも文脈にとって違うように動いたり、不具合に遭遇したりして期待を裏切られる。そうではなく利用者の期待通りに動作し、違和感のないフィードバックを提供し続ければ道具は手に馴染みその存在を意識しなくなっていく。ユーザーの目的はそのツールを使いこなすことではなくツールを使って何かを成すこと。無意識で思い通りに扱える手触りの良いもの。そんなものを作りたい。


マンガで日本の歴史を学ぶ

2025/04/06

学生時代の日本史はどちらかといえば苦手科目で、年号の語呂合わせなどは楽しかったが各時代の流れはあまり記憶にない。日本各地に旅行に行くと歴史的なスポットに出くわすことが多々あり、歴史を知ればもっと旅行が楽しくなりそうだなとは常々思っていた。

かといっていきなり歴史の専門書を読んでも挫折する未来しか見えない。学校で歴史の先生をしていた同僚に話すとまずはマンガでの入門を薦められ、一番興味があった幕末〜明治維新の頃のマンガを読んでみた。「お〜い!竜馬」は坂本龍馬が主人公の幕末を描いたマンガ。新撰組や高杉晋作、桂小五郎や西郷隆盛など歴史に疎い自分でもよく知る人物たちが登場し、彼らが何を成したか、どういう関係性だったのかをとてもよく理解できた。昔のマンガなのでなかなか凄惨なシーンもあるのだが、国を変えるために立ち上がった人物たちは生き生きと描かれる(デフォルメもされている)。ちなみにお〜い!竜馬の原作は武田鉄矢氏。龍馬が好きすぎてマンガにしたらしい。

幕末について理解が深まった感覚を得られたので、次は戦国時代や源氏・平氏の時代を知りたくなった。このあたりもワードは残ってるが関係性はよく分かっていない。子供向けの歴史マンガから始めようと調べたところ、角川が出している「角川まんが学習シリーズ 日本の歴史」は全編通して同じ先生が監修しており、一貫性の観点で読みやすそうに思えた。近所の図書館で何冊かずつ借りて読んでいる。勉強にはなるが、一冊で一つの時代を描くのでどうしても急ピッチになり入り込めないまま読み終わってしまう。わがままを言えばお〜い!竜馬くらい長編で、ストーリーが面白くて脳裏に刻まれるような作品を読んでみたい。大河ドラマなどが良いのかもしれない。できればマンガで探したいが、あまり良いものがなければ大河ドラマの一気見を試してみたい。


自分が「やらないこと」を決めておく

2025/04/05

インターネットやSNSの浸透でリーチできるニュースは格段に増えた。いろんな人がいろんなことを言っている時代、人の興味に自分を合わせていると時間がいくらあっても足りなくなる。自分の「やらないこと」を明確しておく必要がある。

例えば昨今のAIブームでWeb業界では新しいツールが次々とリリースされている。これらのリリースをすべて追っていてはそれだけで人生が終わってしまう(むしr足りない)。傾向を掴むために一時的に見るのは良いがそれを主にしない。たくさんのツールが登場してほとんどが消えていく。淘汰されて残ったものをキャッチアップするのでも十分間に合う。

AIについてひたすら発信するのも自分はやらない。新しい技術を試してみたり、工夫点や困りポイントをブログに書いたりしてくれる方は本当に尊敬している。エンジニア業界のオープンな雰囲気はこういった情報交換によって形成されたと思うが、ただ記事を書くことは自分はやらない。自分がメインでやりたいのはWebサービスを作ることである。世の中が便利になったり楽になったりするものを作りたい。自分の勉強用にまとめたりはするし、AI活用の良い実践ができたら共有していきたいと思うがそれがメインではない。あくまで主体はサービス開発で、情報のシェアは副産物的な立ち位置になる。

できるだけ多くの人と人脈を築くようなこともやらない。少数の自分が仲良くなりたい人を大事にする。一方で興味のあることや学びについて話したり議論したりする仲間は超重要だと思っている。そういうゆるいつながりは大事にしたい。新しい人と会うことも好き。でも知り合いの数を増やしたり、いろんな会社に自分の顔馴染みを作ることは目的にはならない。大人数で豪華なパーティーをするより、自分の身近な人にささやかなギフトを贈るような人生を歩みたい。人がうまくいってるのを見ると自分も真似したくなってしまう。模倣をはじめる前にそれが「やらないことリスト」に入っていないか確認し、大事なことに時間を使えるようにする。


口はひとつで耳ふたつ

2025/04/04

口はひとつで耳はふたつ。自分の話を喋るよりも相手の話を聞くことに力を使う方が人間関係は良好になる。単なる雑談でも相手の話を聞いた方が自分の世界が広がるし、何か相談事であればこちらからのアドバイスを押し付けるよりも相手の本心を引き出す方が話はうまく進む。全力で相手に注意を傾けて話を聞く。単純で難しいが、常に意識しておきたいことの一つだ。

人と話す時に聞き手に回る。素晴らしい作法だがそうすると自分の気持ちや意見を表現する時間が足りなくなる。自分を出せないとそれもまたフラストレーションが溜まるが、自分としてはその気持ちは文章で書いて晴らせば良いというスタンスだ。対人で会話しなくてもテキストで書けば、それで十分心は満たされる。

アメリカの100ドル札に描かれているベンジャミン・フランクリンは「人に話すと自慢になるが本に書くなら興味ある人だけが読むので良いだろう」と言っている。文章ならそれにどれくらい注意を向けるかは読み手が決められる。自分に合わないと思ったら飛ばせるし、時間を拘束しないので対面で話すよりよっぽど良い方法だという。

発散の方はそんなところにして、聞き手になるときの態度について。相槌や質問などいろいろなテクニックが紹介されているが、一番大事なのは相手の話に本気で興味を示すことだと思う。それができれば自然と前のめりの姿勢になり、それは相手にも伝わる。綺麗や上手じゃなくても良いので興味を示す。相手の話すことに疑問を持ったり興奮したりする。そういうことであれば自分にもできそうである。