「やりきる意思決定」を読んだ
「やりきる意思決定」を読んだ。プロダクトマネージャーの仕事で一番新しく学ぶ必要があったのが意思決定で、書籍や実際の経験から学んだ内容をnoteにまとめたりしていた。この本はそれを見かけた著者の方から献本いただいた。一冊通して読んでみて、AI時代に人間がやるのは意思決定になるよなぁと改めて実感することになった。
生成AIの性能は本当にすごくて驚かされっぱなしだが、それでも会社や事業をどうしていくべきかを答えることはできない。そのビジョンは人間が決めることだから。ビジョンを実現するための選択肢やヒントを与えてもらうことはできる。しかしヒントのどこを実際に取り入れるか、どう試していくはやはり人間の仕事のままである。
良い意思決定とはどういうものか?情報が適切に集められて、その中から重要なものを精査できて、小さく実践して解像度をあげていく。チームや組織で取り組む場合にはコミュニケーションも重要。意思決定の前提や、なぜその考えに至ったかの文脈を伝えて組織が同じ方向を向ければ推進力が大きくなる。そういった各ポイントについて、本書では具体例を交えながら分かりやすく紹介されている。
例えば顧客インタビューの作法について。よくある間違いとして誘導するような質問をしてしまったり(「クーポンがあればまた来店しますか?」と聞いてしまう。ユーザーはよく考えずにYesと答える)、目的が曖昧なまま進めてしまって集まった情報を活用できなかったりがある。インタビューは目的に沿って景色をできるだけ広くするために使うもの。ユーザーの行動パターンやその背景を深掘りし、ユーザーに「なりきれる」くらいになれれば成功といえる。
個人的に面白かったのが「見つけた課題にどう挑むか」という節。著者の方がヒットサービスを生んだクリエイターにインタビューしたところ、革新的なアイデアは「既存の概念や解決策を別分野に応用した」パターンが多かったという。昔読んだ「コピーキャット」という本にも同じことが書かれていた。ゼロから生み出されるアイデアというものはほとんどなく、概念の新しい組み合わせにより新しいものが生まれる。なので、事業を伸ばすためにはまずインタビューなどで課題をたくさん集める。その中からいま解くべき課題を見定め、自分がコレクションしてきたアイデア集から解決策に応用できるものがないかを探していく。課題が見つかってから調査を開始するとどうしてもその軸から逸脱しづらく一般的なアイデアの枠を飛び出せない。ユニークな角度の意見を出せるかは、普段から自分の引き出しをどれだけ拡げられているかによる。
本書の主題ではないが、題材となっているサービス「AI Central」も面白い。ユーザーや従業員からのフィードバックは膨大すぎてそのまま使うのは難しい。そこでAIにより大まかに分類して整理する。整理しておくとAIが必要に応じて知識を引けるので、商品開発などの際にチャットなどで尋ねると濃い文脈が乗った回答をしてもらえる(と理解している)。最近はコンテキストエンジニアリングといってAIに渡す情報をどう設計するかがAI開発のひとつのテーマになっている。技術領域で議論されることが多いが、このサービスはビジネス領域でコンテキストエンジニアリングしている事例といえるかもしれない。
確実じゃないことを気軽に話す場が必要
同僚と最近のAI活用について雑談した。こんなツール使ってますとか、こういう流れでやるとスムーズですよとかを画面共有しながらざっくばらんに話した。
OpenAI、Google、Anthropicなど各社のモデルが日々アップデートされるなかで今どれが良いのか把握するのは難しい。ベンチマークの評価レポートは出ているが実際の使い方と項目が違う場合も多く参考程度にしかならない。私はこうしてます、という生きた体験談を話す時間はとても貴重だ。
私は10年ほどモバイルアプリ開発をやっていたが、モバイルアプリも初期の頃はこういう雰囲気があった。Appleの仕様変更にどう対応すべきか?それは何か決まった方法が周知されるというより、勉強会の後の懇親会で話すなかで方向性が定まるような感覚に近かった。そして技術やエコシステムが成熟してくるとそういう機会は減り、より専門的な技術の話題に中心が移り変わっていった。不確かなことはブログにまとめてもすぐ陳腐化する。そういう情報は雑談やXのポストなど一時的な場所がよく似合っている。
昔はよく技術系の勉強会に行っていたが、いま久しぶりにまた行きたい。しかしほとんどの勉強会が関東で開催されており、関西に住んでいる自分にはアクセスが悪い。オンラインで発表とかもできるが、発表というよりはもっと曖昧な情報を共有したいのだ。
ありがたいことに日々キャッチアップしている知り合いは何人かいるので、今後はそういう人に個別に声をかけて喋る時間を作っていきたい。AIといっても幅広いが、試したり失敗したりした経験談はきっと何かの役に立つ。
夏休み2025
今は週3勤務のフリーランスとして働いているので、会社が定める夏休みというものは特にない。お盆の時期もいつも通り働いていたが、その合間を縫って実家に帰ったり友人と麻雀したりした。
実家に帰っていつも驚くのは甥っ子・姪っ子がデカい。昔は一緒にゲームなどしていたが、気づくと甲子園球児と同じくらいの世代になってる。会話の内容ももう大人と同じで、私がしているWebの仕事はどういうものかと尋ねられた。
「スマホアプリやパソコンで使うWebアプリを作ってるよ。いまAIの進化がすごくてプログラミングといっても手を動かさずチャットだけで作れたらするんだけど、そういう変化に慣れるのも大変なのでその手伝いみたいなこともしてる」と答えた。実態の3割くらいしか表現できてない気がするが納得した様子だったので良いとしよう。
麻雀の会ではこの日のために作った点棒計算アプリをお披露目した。最初に使い方を紹介して使ってみる。アニメーションや細かい使い勝手など、こだわった点がとても良いと言ってもらえてうれしかった。実際に使ってみると足りない機能や自分では気づけなかったバグも見つかる。このメンバーでの集まりは年3回あるので、次回に向けて改修することにする。自分や友人が便利だと思うものを作れてうれしい。エンジニアになった頃の初心を思い出した。
ロボット掃除機をポチった
ロボット掃除機を買った。Ankerの「Eufy X10 Pro Omni」というモデルで、まだ上があるものの高級路線のひとつだと思う。友人のPodcastや知り合いのクチコミで1年前くらいから気になっていたが、持っていたハンディ掃除機が壊れたタイミングで購入。たまたまAnkerのセールで25%オフになっていてお得に購入でき、届くのを楽しみにしている。
調べた感じでは2cmまでの段差なら乗り越えることができ、一度発動したらすべての部屋に行ってくれそう。カーペットの上に乗ったら強力モードに切り替わり、フローリングは水拭きしてくれたりと商品紹介的にはかなり良さそうに見える。ロボット掃除機が働くためには床にモノを置かないようにする必要があり、それで副次的に部屋が片付くようになるという話もよく聞く。以前ロボット掃除機を使ってたのは5年前ほどのBravaなので、そこからの技術の進化が楽しみだ。
週末に人がやるよりは週3回ロボット掃除機が綺麗にしてくれる方が綺麗な状態を保てる。ドラム式洗濯機や食洗機もそうだが時間と余裕を買うのに近い。その浮いた時間で何をするのかというと結局YouTubeを観たり麻雀をしたりするわけなのでそれが何に繋がってるのかはよくわからない。でもAIや文明が発達して生産性が10倍になったとき、じゃあ10倍成果出せますよね、という社会では疲れ果ててしまう。技術が進化した分だけ人間はゆとりを持てる。そんな形でゆるく時間を過ごせたら良い。
かっこいい服と自分に似合う服は違う
すっかりオーディション番組「THE LAST PIECE」にハマっているが、社長でプロデューサーのSKY-HIが何度か言っていた言葉が「かっこいい服と自分に似合う服は違う」。曲を自分たちで作るクリエイティブ審査のなかで出た言葉だが、ファッションでも音楽でも、そして普段の仕事でもこれは当てはまる。
同僚や先輩、SNSで活躍している人などを見ると憧れる。自分もそうなりたいと思うが実際には難しい場合が多い。それは自分の積み上げてきたものとその人のストーリーがあまりにも違うから。ずっと自宅でひとりで技術と向き合っていた人が、毎週有志が集まる勉強会を主催している人にいきなり変わるのは難しい。エッセンスを何割か吸収することはできる。でもあくまで自分と向き合い、自分にあった形で取り入れる必要がある。
もう一つ好きな言葉が「ハンデすら美点」。これはSKY-HIではなく候補者のひとりが曲の中で歌っていたフレーズ。その候補者は小学四年生のときに吃音症を「獲得」して歌を届けるのを諦めていた。しかし今また挑戦し、得意のダンスに伸びてきた歌の実力が合わさって高い人気を得ている。こんなに明確じゃないにせよ、誰もが自分のコンプレックスを抱えている。嫌だ嫌だと遠ざけても自分から離れることはなく、一周回ってそれを自分の特徴と捉えられた時に自分らしさの武器に変わる。この切り替えはとても難しくて長い時間を要するが、前を向けたときは受け入れられた自分の度量が少し大きくなっている。