「ゆるストイック」を読んだ
「ゆるストイック」を読んだ。本屋さんでいまの売れ筋としてよく紹介されていたが、紹介されすぎて逆に手に取らず敬遠していた。何かの書籍かブログで言及されていて興味を持ち購入。読んでみるととても面白い。ここ数年で自分が読書したり文章を書いたりしながら考えていたことが言語化されて一冊にまとまっているという感覚で、パラレルワールドの自分が書いたのかと錯覚するほどであった。
まず表題の「ゆるストイック」は「競争にとらわれすぎず、かといって怠惰でもないスタイル」を指す造語。Z世代よろしく最近の若者は競わない。それは他と比べて上にいくことの無意味さを感じているからだが、この競わない性質は「頑張らなくていい」とはまた意味合いが違う。彼らも本当は頑張りたいし、何かに打ち込みたい。ならば競争ではなく没頭を目指そう。自分のやるべきことを明確にしつつ、そのスタイルを周囲には押し付けない、それがゆるストイック式。
自分がエネルギーを注ぐ領域はどう見つければいいか?それは自分の得意なことから探す。自分ではなんとも思ってないことで周りからすごいと褒められた経験を思い返してみよう。他人にとっては大変だけど自分にとっては余裕なことがあれば、それは特技といえる。得意領域を見つけたらそこで継続して頑張ってみる。続けるのが辛いと思わないだけで、そこでは実績を積み上げやすくなる。
数年前までは「ゴールまでの道のりを逆算しろ」とよく言われた。しかし今は不確実性の時代。ゴールまでの道のりが見えないことも多く、無理にロジックで説明しようとすると逆に視野が狭くなることもある。「頑張ればすぐに成果が出るはず」と意気込むのは、逆に結果が出なかったときに燃え尽きてしまう要因になる。逆算じゃなくて毎日積み上げる。たまに成果が出たらラッキーだと喜び、すぐに忘れて変わらずまた積み上げる。そんな態度が望ましい。
本書で一番面白かったのは脳の機能低下の話。人間の生物学的なピークは、
- 18歳で身体が完成する
- 28歳で脳の発達が終わる
- 38歳で生物学的に寿命を迎える
らしい。老化がはじまって最初に起こるのは「意欲の低下」、つまり新しいことにチャレンジする気が起きなくなる。自分がリスクを犯して何かにチャレンジするより、それまで培ってきた経験を次の世代に伝えて育てていく役目に移り変わるよう設計されている。よくデザインされてるなという感じだが、しかし人生100年時代の今では38歳を越えても好奇心は保ちたい。そんな時は習慣を利用する。毎日10分散歩すると決めて、ただ毎日それをやる。人間の脳は面倒くさがりなので毎日やってることがあれば頭を働かせず自動でそれをやることにする。やりたいことを小さく分解して習慣化すれば、歳を重ねても新しいことにトライし続けることができる。
嫌なことがあったら紙に書いて丸めて捨てる。脳は現実とイメージの世界の区別が得意ではないのでそれだけでも気が楽になる。何か没頭できることがあればそれも脳には良い。何かに集中してる間は他の雑念に捉われず良い健康状態を保つことができる。
競わない、積み上げ、没頭、不確実性、自分の得意の見つけ方。最近自分が考えていたテーマにドンピシャで一気に読み終えてしまった。調べたら著者の佐藤さんは2歳上でほぼ同世代。この世代が見てきたり経験してきたものをまとめると、近しい出口に通じているのかもしれない。