コーチングは実力が7割
コーチングは話の聞き方や態度などが大事と教わるが、友人に聞いた話によるとコーチ者の「実力」が7割を占めているらしい。教わる者にとって、優しい言い方や楽しい雰囲気であることよりも、教えてくれる人が本物であることが重視される。人と接するソフトスキルの比重が高まっている現代で不思議な感じがしたが、確かに自分が教えてもらう時を考えるとそうかもしれない。ガワがどれだけ良くても本質がなければ学ぶことは少ない。逆に無骨で口下手でも本物のスキルは見て真似したくなる。
元プロ野球選手の落合さんの本にあった「技術が精神を作る」論にも似たものを感じる。コーチングを上手くなろうと表現をいくら磨いても伸び率は低い。それよりも圧倒的な実力をつけること。スキルを磨けば自ずと人に伝えるものができる。ただ技術を深めれば良いとわかれば集中して勉強しやすく、実力7割論は明るい知らせに思える。
同じタイミングで友人と「No No Girls」の話をした。プロデューサーである ちゃんみな は、実力もフルにありつつ伝え方も抜群にうまい。相手の話を聞き、そこで現れたシグナルを見逃さず、自分の経験を踏まえて具体的なアドバイスをする。実力7割に加えてコミュニケーションの3割でも満点を取る。世の中のどの本を読むよりも、No No Girlsを見る方がコーチングの何たるかを教えてくれると思う。
AI開発で趣味のツールを作ってみた
「Claude Code」というAIエージェントが注目を集めている。これまでのAIエージェントと違う点としてGUI(Graphical User Interface)がない。つまりコマンドを打って指示するのみで、ファイルを開いたり編集したりの機能は含まれていない。AIエージェントのレベルが進んだ世界では人間がAIの間違いを確認したり修正したりすることは減って、タスクの指示に集中できる。そういうコンセプトで作られたClaude Codeは、元々社内で使うために使われるものだったのが、社内でクチコミが広がって盛り上がり、世の中に公開することになったらしい。人が使うならGUIは必須だと思っていた自分は当初は興味を持てなかったが、一度使ってみるとその精度の高さに夢中になってしまった。
まずは実装の精度だが、これはかなり賢いといえる。感覚的には新卒4年目くらいのエンジニアくらいは実装できる。しかもデザイン、インフラ、データベースなどの領域を問わずに精通している。ある程度細かく指示すれば90%くらいの確率で欲しかったものが作られる。適当な指示でも結構いける。たまにミスる時もあるが、それはこちらの指示が曖昧で他の画面と間違えてしまったり、過剰にハイレベルな実装をしてしまってるとかで納得できる間違い方になっている。人間のように根本から勘違いしているとか、クセのある実装をしてしまうとかがほとんどない。
使ってみた系の記事は多くあるので、自分は本当に実用的なツールを作ってみようと思った。以前から欲しかった麻雀の点棒管理アプリで、点数のやり取りの時に本物の点棒じゃなくてスマホで点数スコアを移動できるというもの。友達の家でたまに麻雀をするのだが、そこの雀卓には点棒管理の機能がなくて点数はその都度聞かないといけない。そういうアプリがあったらいいよね、みたいな話が出ていたのをやっと実装した。実際に自分たちで使う想定なのである程度のクオリティが求められる。変なバグがあると便利にしたつもりが逆に手間が増えることもある。色々考えられるケースを挙げ、AIと相談しながら実装を進める。実装が高速かつ高精度なため、チャットだけで望むものがすべて作られた。次の機会には試せそうである。自分だけが使う趣味のツールを作るのに、1ヵ月もかけるのはなんとなくコスパが悪い気がして腰が重くなる。これがAIなら1日でできる。しかも自分には実装できないような数字が増減するアニメーションなどもサッと実装してくれて満足度が高い。いろいろアイデアがあるけど作る時間がない人には良い時代になった。一方で、サービスが乱立するので本当に使い続けてもらうものを提供する難しさはあがっている。
Claude Codeは並列で作業ができる。つまりタスクA、B、Cを同時に依頼して3本のレーンを走らすことができる。これは人間がやるなら相当の人数が必要なので革新的といえる。ただし3つのレーンから挙がってくる完成物を人間がレビューしないといけない。正しく動いてるか、変なところが壊れてないかをチェックするのはそれなりに時間がかかる。並列作業は強力だが、人間側の負担がかなり大きいと感じる。実装された内容の確認、既存の機能が壊れてないかなど、次はチェックする側のAIが必要だ。それも今時点でかなり惜しいところまで出来ているので時間の問題だろう。ここ数年でものづくりの未来は変容していく。
サービスを個人に作るか会社に作るか
Webサービスやアプリを作るとき、それを誰に届けたいかを考えることが重要。「なんとなくこういうの流行ってるから」では誰にも刺さらない。こういう人たちがこうやって使うもの、というイメージがあると良いものが作れる。
誰のために作るか?大きく分けて「個人向け」と「会社向け」がある。個人とは一人一人が自分の意志で選ぶもので、例えばTikTok、メルカリ、Yahoo!天気のようなエンタメ・ツール系のものが多い。対象の母数が多いので爆発的に流行るチャンスがある。ゲームなども個人向けに分類される。ただしゲームは一発当たったときにピークが来るが、基本的に何もしなければ人気は衰える。逆に家計簿アプリのようなツール系サービスは一度良いものを作り切ればユーザーは積み上げられていく。このあたりの違いは押さえておく。
一方、会社向けのサービスは組織として契約して従業員が使う形態を指す。そのサービスを見つけてくるのは現場のスタッフかもしれないが、最終的に導入を決定するのはもっと上位のレイヤーとなる。会社は何かしらの事業をやっていて、そこには常に課題がある。クリティカルな課題はお金を払ってでも解決したい。なのでその課題を解決できるサービスになっていればお金はもらいやすい。会社で採用する場合、セキュリティやその会社の要件に合っているかが重視される。そのため個人向けのものよりも使い勝手が悪くても契約される可能性がある。ひと昔前はひどい出来のサービスを使わされて現場が疲弊するみたいな話もあったが、最近は技術が進化・浸透して使いやすいものが多くなっている。
個人向けでも会社向けでも、大事なのはクチコミが生まれるくらい良いものを作ることである。個人であれば友人や家族に紹介して伝わる。会社であれば同僚や同業種、あるいはその会社のスタッフが別の会社に転職し、次の現場でも導入を提案してくれたりして拡がる。人間は同じ属性を持つ人同士でコミュニティを築く。その人に刺さるものを作れれば、その人が所属するネットワークに伝播する可能性が高い。
情報は一気に読み込むと吸収しやすい
新しいAIサービスが登場したとき、流れてきたXのポストを読んだり技術ブログをちょっと読んだくらいではほとんど理解できない。いまは新しいサービスは次々と流れてくるのでそれを追うだけで時間が過ぎる。なんとなく単語は追えるが本質には迫れず、なんだかモヤモヤする日々を過ごしていた。
6月からAI支援的な仕事がはじまり、時間を取って各社の動きや料金体系などを表にまとめながら整理してみた。そうすると数時間で把握できる。AIの分野は幅広いので全然カバー範囲は狭いのだが、普段の活動においてはその狭い範囲で十分だったりもする。流れてくる情報を受信するだけだと必要なものをフィルタする力が少しずつ弱まっていく。能動的に情報を集め、取捨選択することでフィルタ力を取り戻すことができる。
SNSには玉石混合の情報が流れるが、本当にすごいものは他とは違う盛り上がり方をする。例えばAIエージェントのClaude Codeは月15,000円もする高額プランを提供しているが、これを契約している人がXで多く見られた。さすがに価値を感じないとかけられない金額である。仕事ではもちろん趣味の用途で契約している人もいる。こういう熱を帯びた技術には注目していきたい。
個人開発しているものでもAIが絡む機能がある。AIの流れが早すぎて、考えた時は最先端だったのに今ではもう陳腐化が始まってる、というようなことになる。世界中が注目しているAI開発でワンアイデアで抜け出そうとするのは無理がある。AIのトレンドを追いつつ、自分のサービスのコアな価値を高める方法で活用したい。
「無料」に縛られすぎずにWebサービスを作る
個人開発は趣味の領域。できるだけお金がかからないように作り、それでお小遣いを稼げればラッキーくらいの気持ちで今までやってきた。速度や手間は少し妥協することになるが、無料プランを組み合わせて作ることもできる。社会人数年目まではそのスタイルにこだわっていたが、最近は少し心境が変わってきた。
無料で作り切ることもできるが、それは2番手3番手の選択肢を取り続けることになる。なぜ豊富な無料枠があるかというとサービスを知ってもらうためで、後発のサービスがNo.1との価格の差別化として提供していたりもする。これらは無料は代わりに機能が少なかったり管理画面が使いづらかったりする。確かにランニングコストはかからないが少しずつ面倒が積み重なる。表示速度などに影響する場合もあり、ユーザー体験が悪くなる部分もある。趣味で作っているのでそれでも妥協できていたが、今はお金が多少かかっても納得できるものをリリースしたい気持ちが高まっている。
これは本当に長続きするものを作りたいという気持ちからかもしれない。基本的に一度決めた技術スタックは後で変えるのが難しく、微妙な技術選定をしてしまうとサービスが流行った後にそこがネックになってしまう。王道のベストプラクティスがあればそれに従いたく、そうするには多少の支払いは必要になる。お金を払うことでネガティブなのはそのサービスが流行るまで待つ体力が必要になるということ。鳴かず飛ばずのサービスの運営に毎月5万円かかっているのは辛い。どこかのタイミングで進退を判断しないといけなくなる。これが月500円ならもっと長い間粘れる。Airbnbは最初の2年間まったくユーザーに見向きもされず、それでもサービス改善を続けてやがてヒットした。マーケティングにかける予算がない個人開発は基本的に長い期間寝かせる必要があり、そのためには毎月の支払いが小さい方が効率は良い。
このあたりのバランスは難しいが、今のところは「売上ゼロでも2年くらい支払い続ける金額に抑える」というラインを意識している。月5万円なら2年で120万。それを払うだけの価値が今作ってるものにあるかどうか。2年改善を続ければ可能性があるかの兆候は見える。無理に無料で運用するよりも、思いっきり2年走り抜けた方が当たる可能性も高い気がしている。