村上春樹氏の生活リズム

2025/03/31

最近読んだ複数の本で、小説家の村上春樹の習慣について触れられていた。午前4時に起きて5-6時間続けて執筆。午前の間に仕事は終え、午後からは運動や読書、音楽を聴くなどして過ごすらしい。夜は21時就寝で、365日このリズムを繰り返す。

「学ぶは"まねぶ"」ということで、まずはそのまま真似してみた。朝7時に起きて13時頃までプログラミング、そして午後は運動や読書をして過ごす。朝起きがけの時間は頭がクリアで確かに創作活動に向いている。体力ゲージも回復してるし雑念がないので、目の前のことに集中できる。何も考えずにいると仕事開始後の最初の仕事はメールやビジネスチャットの確認になるが、頭がクリアな時間にするには勿体無い。先にクリエイティブなこと、それからコミュニケーションの仕事という順番が滑らかに進む。

予定通り午前にプログラミングを出来たとして、午後以降はもうプログラミングをしないというのが地味に難しい。やりかけの部分が気になったり、ちょっとだけ続きをやろうとして夜も作業してしまったり、手を止めて翌日に回すというのが中々出来ない。読書や買い物よりもプログラミングが面白いのでそうしてしまうが、これをやり始めると一日中作業していることになって疲れていく。5-6時間ほど集中して作業できれば十分で、追加で時間をとって一日でブーストするのではなく、毎日その5-6時間を着実に積み重ねることを意識する方が結果的には遠くまでいける。

最近読んでいる将棋の本に「普通の手を積みかねて有利な局面を作っていく」と書かれていた。一発で形成逆転できるムーンショットを実現するのは難しい。良いと思う方向に少しずつ、毎日の積み重ねで近づいていく。肉体や精神の健康に気を配りつつ、自分のリズムを作ることにしばらくの間は向き合いたい。


「すべき」から解放される

2025/03/30

仕事のセオリーであったり世間一般の常識であったり、大人になるほど「こうすべき」が身についていく。先人が積み上げたノウハウ集なので従えばある程度はうまくいく。しかしと周囲と同じ行動をすることになるので成熟してくるとそこでは差がつかない。方法論ではなく、自分の見てきたものや考えてきたものの反映が差別化になる。

自分が「すべき」に捉われていると他人にもそれを求めるようになる。相手に勝手に自分の基準を押し付ける。相手としてはそんなもの知ったこっちゃないので、当然基準に沿わないことも多くなる。それを見てその人がダメだとか、仕事ができないとか判断を下していると世界はどんどん窮屈になっていく。

「すべき」ではなく「したい」を大事にする。自分はこうしたい、こう考える、というのを信じてみる。世の中の常識とは違っても、自分の内なる声に従う方が後悔が少なくて済む。人に依頼するときは自分の想いを伝えて、その上でどういうものが返ってくるかはその人次第。その出来は良し悪しというよりは自分とその人の相性なので、そういうものとして受け止める(認識がズレてるなどそれ以前の問題であれば修正する)。

組織やチームでいうと、「すべき」をルールでガチガチに固まるのではなく、「こういうチームでありたい」というビジョンを伝える。しつこいぐらい何度も伝える。目指す先だけど共有できてれば、あとは各人がそこを目指して自分なりの最高の道筋で進んでいける。楽しんで創意工夫するチームは強い。そういうマインドが育まれる組織でありたい。


不幸になる方法を考えて逆を行く

2025/03/29

最近は自分がどういう状態であれば幸せかをよく考える。年齢的なものもあるし、年収をずっと上げていくような生き方に息苦しさを感じるというのもある。「イノベーション・オブ・ライフ」には自分が大切なものに時間やお金を配分する重要性が書かれている。大切なものは人によって違う。まずは自分は何があれば満たされた気持ちになるのかを理解したい。

10年ほど前、近所に広島焼の美味しいお店があってよく通っていた。そこはカウンターだけの小さなお店だったが、たまたま隣に座っていた同世代くらいの方に話しかけられた。その人は絵本作家を目指しているらしく、良い絵本とはどういうものかを教えてもらった。彼曰く幸せの形は多様で表現が難しい。しかし不幸はある程度みんなイメージできる。なのでよく売れている絵本は不幸をあえてピックアップし、そこから解放されるような描き方をしているものが多いらしい。幸せを定義して目指すのは難しいので不幸をひとつずつ剥がしていく考え方。たまに思い出しては何かヒントをもらえているような気分になる。

普段生活していて、私たちは小さなストレスを細かく受け続けている。「仕事が本当に嫌いで出社したくない!」などの強いストレスは表面化するので対処されるが、細かいものはつい見過ごしてしまう。こういったものが少しずつ自分のエネルギーを削っていってしまう。自分は何が不安なのか?何を恐れているのか?落ち着いた場所で自問し、それを紙に書き出すと整理されて心に余白ができる。すぐに対応が難しいものでもモヤモヤの正体が分かればかなり気は楽になる。エネルギーは増やす必要はなくて私たちに元々ある。それを削っている要因に目を凝らすようにすれば、不幸から少しずつ離れていけるかもしれない。


ビルドインパブリックという開発手法

2025/03/28

昨今のWebサービスは作ることよりも使ってもらう方が難しい。技術の進化により作ること自体はかなり簡単になった。小慣れた機能や美しいデザインも作れる。難しいのはサービスを知ってもらい、そして使い続けてもらうことである。

「ビルドインパブリック」という手法がある。これはリリースしたサービスの開発状況や改善の様子をXやブログで公開していき、それによりサービスのユーザーを増やしていく方法。自分の使っているサービスの新機能が出来上がっていく様子を知れるのは何となく面白い。リリース時点では機能が足りてなくても、その後すぐに追加されそうであれば利用を続けてもらえる可能性もあがる。そんな事情もあり、特にXなどでコミュニティが形成されている開発者に向けたサービスなどではビルドインパブリックがよく用いられている。

認知してもらうには継続的な発信が必要だが、自分の開発しているものであればネタには困らない。そういう意味でビルドインパブリックはよくできた手法だが、個人的には落とし穴もあるように感じる。開発で難しいのは後方の互換性を保つことで、新しい機能をリリースする際に他のシステムや過去データが壊れないように気をつけるのは思った以上に難しい。公に発信するとなるとトピックが欲しいので次々とリリースすることに力学が働くが、突貫で作ってしまうと負債になり後半の開発にブレーキがかかりだす。では作り込んでから一気に出せば良いかというとそうでもない。市場のタイミングを逃すリスクがあったり、リリースしないとそもそも反応がないので誰も必要としていないものを作り込んでいる可能性がある。結局はバランスということになり、どこに重心を置くかは開発チームの性格によって違いが出る。

日本だと有名なのはInkdropというサービスを開発しているTakuyaさん。開発の様子や考えなどを発信しながらファンを増やされている。見た目上はブログを書くだけなので簡単に見えるが、その内容が芯を喰ったものであったり、その人なりの考えがあって読み応えがあったりでないとすぐに人は離れてしまう。そして何よりまず魅力的なプロダクトがあるというのが大前提。そもそも価値のないプロダクトでは周りをどれだけ豪華に飾っても真に響くことはない。それに良いプロダクトであればそれ自体に宣伝効果がある(クチコミで広がる)。まずはコアのプロダクトに集中、そして次に広める。どちらも大事だが、順番があることは忘れないようにしたい。


AI開発はいちいち未来に思いを馳せて忙しい

2025/03/27

AI激動期で変化が激しい。AIを上手く活用すれば誇張なしに10倍以上の速さで作れるということで、最近は作る対象そのものよりも「AIの活かし方」の議論が増えていると感じる。AIとのチャットだけでWebサービスを作ることを「Vibe Coding(バイブコーディング)」というらしい。細かいところは気にせずバイブスで実装する。世界中のコードから学習したAIは、バイブス任せでも自分より良い実装をしばしばしてくれる。

AIについて調べながら実装していると、未来の広がりに気を取られて目の前の仕事から意識が剥がされるというのがよくある。将来はこういうこともできそうだ、こういう世界もありそうだ等と考えるのはとても楽しい。しかし手を止めていては前進しないし、その妄想もどこまで実現するかは分からない。世界の研究や論文を追っていけば妄想の精度も高いかもしれないが、リリースされたサービスだけを見て先まで語っても核心にまでは辿り着けない気もしている。

今自分は「ビジョンを考える人」なのか「実装者」なのか、モードを切り替えて作業する。実装者のときはもくもくと作業する。ビジョンを考えるときはとことんまで広げる。実装を進めることでそのビジョンが本当に合っているか確認することにもなる。この2つはフェーズでは区切れず交互に訪れるもの。手を動かす、手を動かす、頭を働かせる。これくらいのリズムで作れば方向を間違えずに前進できる。