社会人初期に読んでよかった本
社会人になりたての頃、右も左も分からず戸惑うことばかりだった。そんな時期に出会ってよかったと思える本がいくつかある。今回はその中から特に印象に残っている3冊を紹介したい。
まずはデール・カーネギーの「人を動かす」。タイトルだけ見るとリーダー論やマネジメントの本のように思えるが、実際は「どんな人間を目指すべきか」という根本的なテーマが語られている。例えば、部下が大きなミスをしたとき、普通なら叱責してしまいそうな場面で、カーネギーは「これだけのミスをしたなら彼はもう間違えない」と続投させる。自分には到底できそうにない胆力だが、人としての魅力や信頼の築き方について深く考えさせられた。
次に「社会人1年目の教科書」。仕事を始めたとき、学生時代とは何もかもが違って戸惑うことが多かった。自分はまず誰かのやり方を真似てみて、そこから自分なりに取捨選択していくタイプ。この本は社会人として気をつけるべきポイントを肩肘張らないやさしい言葉で教えてくれる。なかでも印象に残っているのが「オフィスを移動する際は廊下ではなく机の間を歩け」という章。働いている人たちの雰囲気や空気感を感じ取ることの大切さを説いていて、なぜかずっと心に残っている。会社がフリーアドレスになるまではよく実践していた。
そして「20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義」。常識を疑うことやリスクを恐れすぎないことなど、仕事に対する心構えを教えてくれる一冊。この本がベストセラーになったあたりから「20歳」や「30代までに」など年代のキーワードが入った本が爆増した。ターゲットが明確で、知らないことで損をしたくないという気持ちに刺さる効果があるように思う。この本は学生時代の卒業間際に読んだが、書かれてる内容を実践してみたくなり、社会人初日を楽しみにしていたのをよく覚えている。
AIライティングが面白い
AIライティングというテーマが少し盛り上がっている。これは自分の過去の文章をAIに分析させ、自分の文体や特徴を真似することで自分専用の執筆アシスタントが作れるという取り組み。自分でも試してみたがかなり面白く可能性を感じている。
まず前準備として、自分がこれまで書いた文章からAIに自分の文体を抽出してもらう。これをファイルに保存しておくのだが、慣習的にはwriting-style.md
というファイル名で保存することが多いらしい。例えばこの日記の特徴を出してもらうと、『「自分にとって」という視点を大切にし、一般論を避ける傾向がある』『技術的な事柄も専門用語を極力避け、一般読者にもわかるよう説明する』などが挙げられた。こうして突きつけられるとなんだか恥ずかしいが、言われてみると意識しながら書いているような気もしてくる。
次に、自分が書きたい内容を箇条書き等の適当な形でまとめ、それを自分の文体に合わせて肉付け・文章化を行ってもらう。トピックは網羅しつつも、導入や展開、言葉遣いなどが自分らしい文章となって作られる。あとは少し手直しして完了。普通に書くよりも2-3割エネルギーが節約される感じがした。
AIにすべてを委ねて開発していく「バイブ・コーディング(Vibe Coding)」に対し、これらの手法は「バイブ・ライティング(Vibe Writing)」と呼ぶことができる。ソースコードは実装したあとに運用が必要になるためバグが混入してないか注意を払う必要があるが、記事コンテンツは一度書き上げてしまえば公開して終わりというケースも少なくない。特にドキュメントやビジネス文書、PR文言など、書き上げるゴールが見えている場合はかなり作業を省エネ化できそうだ。
しかし、日記やエッセイといった性質の文章は明確なゴールはなく、それを書くこと自体が目的となっている。こういう「書きながら考える」「書くから考えられる」ものはバイブ・ライティングとは相性が悪いだろう。日記やエッセイのAI活用では、AIに書いてもらうのではなく、日記をすべて読んでもらって自分のコピー像を作る方が有用な気がする。道に迷ったり視野が狭くなったときに過去の自分に相談する。友人よりも経験や文脈に沿ったアドバイスをしてくれるので、ハッとさせられる日が来るかもしれない。いずれにせよ自分についての文章をテキスト化しておいておくと、AI時代には何かと役立つかもしれません。
「HARD THINGS」を読んだ
本棚を整理していたときに「HARD THINGS」を見つけたので読んでみた。2015年発刊で長らく積読になっていた一冊。ビジネス書の名著とされている本だけど、改めて読んでみると組織や仕事について考えさせられる部分が多くて面白い。
特に印象に残ったのは、「良い組織と悪い組織の違い」について書かれていたところ。
良い組織では、人々が自分の仕事に集中し、その仕事をやり遂げれば会社にも自分自身にも良いことが起こると確信している。
誰もが朝起きた時、自分のする仕事は効率的で効果的で、組織にも自分にも何か変化をもたらすとわかっている。それが、彼らの仕事への意欲を高め、満足感を与える。
一方で不健全な組織では、みんなが多くの時間を組織の壁や内紛や崩壊したプロセスとの戦いに費やしている。自分の仕事が何なのかさえ明確になっていないので、自分が役割を果たしているかどうか知る由もない。
これは本当にそうだなと思う。自分自身を振り返ってみても、気持ちよく働けていたときは、たいてい自分の仕事と組織の目標がしっかりリンクしていた気がする。「あなたの仕事は何ですか?」と聞かれて、みんなが自分の役割を明確に答えられるチームはやっぱり強い。
報酬の考え方についても面白い。たとえば優秀なメンバーから「他社からこれだけの条件が出ている」と言われると、つい給与やインセンティブを工夫して引き止めたくなる。しかしそれではビジネス貢献以外の行動に報酬を与えてしまうことになる。そうなるとどうなるか?社員は業績貢献よりも経営陣との交渉が給与アップのために有効だと誤って学習してしまう。業界水準を大きく下回っているなど競争力があまりに低い場合は別として、基本的には「ビジネスへの貢献」のみを見極めるのが長期的には有利になる。そしてそれには「その人はどれくらい組織に貢献しているか」を測る必要があり、日々の仕事と組織目標をリンクさせておく重要性の話に舞い戻ってくる。
朝起きて今日の仕事が明確であること。その仕事が何につながっているか理解していること。組織論などというと大層なことに聞こえるが、結局基本はそれだけのことかもしれない。
時間がないとすべてのサイクルが止まる
クリエイティブな作業をするには時間的・精神的な余裕が必要で、そのためには簡単なタスクから終わらせて取り組む数を減らしたり、机の周りを整えたりもう着ない服を捨てたりと余白を作るのが良いのではないかと何度か書いた。しかしこの余白作りでさえある程度余裕がある時じゃないと取り組めないものかもしれない。余白を作るための余白がない、というジレンマを感じている。
最近プライベートがバタバタしており、なかなか自分のサービスを開発する時間を上手く取れていない。こうなると思い通り進められていないというプレッシャーを感じて精神的余裕がなくなる。せめてスキマ時間でできることをしようとAIの情報のキャッチアップをしてみる。世の中が動いているのに自分は何も出来ていないと逆に焦りは大きくなる。買い物や料理、掃除など生活を回す仕事は出来ているがそれで一日が終わる。読書の時間を取れず、カフェなど自宅以外に行く機会も減ると徐々に頭も働かなくなってくる。YouTubeの動画は頭が回らなくても見れるのでそこに流れる。でも本当にやるべきはこれじゃないので心の何割かは不満を抱えている。
毎日がパンパンになったとき、その状態がずっと続くのか一時的なのかを見極める。ずっと続く場合は何かを手放すしかない。人間の容量は上限があるので新しい関心事が入ったなら何かを抜く必要がある。すべてやるのを諦め、量を減らしたり質を落としたりして作業量を減らしていく。例えば自動食洗機を使って皿洗いの時間をなくすなどお金に頼ることも考える。定期宅配を使って買い物に行く時間を減らすのも有効。負荷が大きいタスクを出してそれを軽くする。これまで通りとはいかず、何かを手放す必要がある。
その状態が一時的であれば、期間を決めてむしろその時間に向き合うことにする。例えば仕事が忙しい2週間は趣味は止めるとか。自分は暑さに弱いので夏の期間はパフォーマンスが落ちる。無理して外出せず体力を温存する。外に出る用事がある場合は帽子や日傘など準備して向かえばまだマシになる。その状態がずっと続くわけじゃないのなら無理に解決せずやり過ごすのも手となる。完全に解決しようとするのはそれはそれでエネルギーを使う。上手くやりすごすメンタルも手に入れたい。
サービス開発でいうと、忙しい時に人間の代わりに進めてくれるのがAIの仕事である気もする。タスクを依頼して進めてもらうことはできるが、人間のチェックは今後も必要となる。特に今作ってるものは仕上げの段階に近づいていて、機能追加は影響範囲を見ながら慎重に進めている。AIにノリで作ってもらうVibe Codingは初期〜中期の頃には有効だが、ユーザーへの提供が近づくと人間の介入は必要になる。AIにもっと任せるには動作確認やテストなど、変更内容を保証する側のAIエージェントが次は欲しい。
住んでる街で見つけたいもの
今の場所に引っ越してきて半年ほど、ようやく街の勝手がわかってきた感じがある。行きつけのスーパーやコンビニが定まり、品揃えの良いドラッグストアも分かった。朝から営業しているカフェ、本屋、おいしいケーキ屋を知り、図書館のカードを作り本を借りれるようになった。交通量の少ない散歩ルートも把握した。ここまで来るとほとんどの移動は半自動でできるようになり、道中にラジオやPodcastを楽しむ余裕ができる。昼過ぎの空腹時に食材が何もないと気づいたとき、最速で何か食べるにはどうしたら良いか分かってすぐ解決できる(近くの弁当屋に行く)。普段の生活ではあまり家から出ないので少しずつ開拓していき、この状態になるまで半年かかった。
新しい場所に引っ越す時、その付近にあると嬉しいのが本屋・カフェ・良い散歩道。スーパーやコンビニほど近くになくても良いが、自分のなかで鉄板で行く場所を確保できるとその土地に愛着が沸き始める。本当は地域の人からおすすめポイントを教えてもらえると早いが知り合いがいないのでその手は使えない。出かける用事がある度に検索し、いろんな場所に足を運んで自分が落ち着く場所を探していく。こういう過程が面白い。
あとは歯医者や内科、クリーニング店など都度必要なお店を見つけていく。同じエリアに住む知り合いが一人いると心強いがこれはハードルが高い。カフェなどのお店の常連になって店主と話すぐらいが妥当かもしれない。いまのところ賃貸物件を移動しながら住むスタイルをとっているので、引っ越した先の街を楽しむスキルは身につけておきたいところ。