摩擦なしに価値を届けるのがデザイン

2025/01/22

Webサービスが届ける価値とは課題解決。「冷蔵庫の食材で作れる献立が知りたい」これが課題。食材の名前を入力する、あるいは庫内をカメラで撮るとそれで作れるレシピを教えてくれる。これが解決策。同じ事象でも人によって課題かどうかは異なる。一人暮らしで賞味期限も気にせず、フードロスが出てもいいと思っている人にとっては食材管理は課題感が小さい。子供に賞味期限切れのものは食べさせたくなく、買った野菜はすべて使い切りたい人にとっては大きな課題。「この課題を解決できるなら毎月500円払えるな」と思う人がいればビジネスになる。解決する課題の総量が多いほど大きな事業になる。

ではデザインとは何か?自分の意見ではデザインは「価値の届け方」。食材を入力するフォームが見えづらいと摩擦がかかって価値は低減する。カメラで撮るボタンの装飾が分かりづらいと機能に気づけない。最近の利用者は説明書を読まない。読まずとも、画面を見るだけでなんとなくできることが分かるよう設計する。そのボタンを押したら何が起きるかを予想させる。解決手段をそれを求める人の手元にピッタリ届ける。

レシピ管理は日常の仕事である。なので毎日見ても目が疲れず、生活に根ざすような色合いが好ましい。これが黒を基調とした高級車のCMのような色使いだと違和感を与えてしまう。逆に高級車のWebサイトではポップなフォントは使ってはいけない。課題をとりまく世界観があり、それを適切に表現してはじめて対象者に受け入れられる。一流ホテルは客室やサービスだけでなく門構えやロビーがしっかりしている。Webサービスにもエントランスがある。

デザインがどれだけ良くても課題がなければヒットはしない。例えばマッチングサービスのTinderのユーザーインタフェースが流行った頃がある。カードが順番に出てきて気に入れば右へ、スキップしたければ左へスワイプするというもので、指一本で使うスマホの特性にあったデザインとして話題になった。色々なサービスがこのTinder風のアクションを取り入れたが今はほとんど見ない。まず解決する課題、次にデザイン。この順番を間違えてはいけない。


「楠木建の頭の中 戦略と経営についての論考」を読んだ

2025/01/21

楠木建の頭の中 戦略と経営についての論考」を読んだ。最近ハマっている楠木さんの著作。楠木さんの仕事は日々忙しくする経営者の代わりに本質を考える「思考代行業」。会社や事業についてその本質を考える。とても肉厚だったので気になったところをメモしておきたい。

まずはイノベーションと連続性について。IT界隈ではよく「イノベーションを起こそう!」と言われるが、イノベーションの本質を理解している人は少ない。イノベーションは改善ではなく革新。非連続な変化に挑まなければならない。なぜイノベーションが難しいのか?それは人々が非連続な変化を拒むから。セグウェイのようなまるで新しいデバイスが出てきても、日常生活の延長で必要ないので流行らない。SONYのウォークマンはイノベーション。それは音楽を聴くという日常の延長にあったから。ユーザーの変化は連続的、しかしその体験は非連続なものがイノベーション。飛び道具に手を出しても長期で上手く行くことはない。

次に抽象と具体について。現実の問題はすべて具体的に現れる。ひとつひとつ目の前に対応していくしかない。しかしそれを個別の事象として理解していると毎回バタバタすることになりノウハウが活かせない。経験や知識を他のケースでも使えるように抽象化して記憶する。この具体と抽象のバランスがセンスに出る。

仕事をしていると抽象と具体の狭間で苦しむことが多い。例えば会議で抽象的に話し過ぎて空中戦になってしまったり、逆に具体的に話しすぎて汎用性を失ったり。このバランスが上手い人にたまに出会うが、そういう人は知識を構造化して整理しているように思う。近しい概念をまとめたり、階層関係を整理して理解する。それができていると相手が理解しやすいように別の表現で例えたり、箇条書きなどを使って読みやすい文章をまとめられる。

最後にお金儲けについて。お金を稼ぐことを目的にするのは邪な眼で見られることがあるが、楠木さんの意見としては「長期利益」こそが目指すところ。アフリカの貧困を撲滅するにせよ、まずはその会社が持続的に儲からないと話にならない。長く利益を出せる事業をする、それで稼いだお金で税金を納める。こういう意見だそう。このあたりは会社経営をしたことはないのでいまいちピンと来ず。サラリーマン目線としては共感できるビジョンを持つ会社で働きたい。ビジョンの実現のために利益をあげていくことが必要というのは分かる。


Duolingoを始めて100日経った

2025/01/20

外国語学習アプリ「Duolingo」を始めて100日が経った。1日15分を目安にしているが忙しい日は1レッスンだけして終える場合もある。そんな感じで気持ちは緩くなっているが、なんとなくで続くくらいには習慣化したということで肯定的に捉えたい。

チャプターは進んでいるが難易度が特段あがっているようには感じない。それよりは色んなシーンでの英会話を練習している。飛行機、レストラン、自己紹介、家庭の会話。各シーンでよく使う単語や熟語を反復して学習する。日常で使う単語は中学まででだいたい学び終えると聞いたことがある。会話で難しいのはそれを組み立てたり、瞬間的に反応したりすることなので反復練習は効果的に思える。単語では「dinosaur(恐竜)」や「mess(散らかっている)」ようなシンプルなものがなぜか覚えられなかったりする。苦手克服のセッションがあり定期的に間違えた問題を復習させてくれるのもありがたい

サービス設計としても学ぶところがある。一度Duolingoをするのを忘れた日があり、連続学習記録がストップしてしまった。翌日それに気づき焦ってアプリを開くとアイテムが紹介され、それを使うと連続記録を継続することができた。この仕様は作り手としても議論がありそうだ。アイテムで誤魔化すのではなく本当の連続記録を表示するべきという意見も正しいように思える。ただDuolingoの目的はユーザーが外国語を使えるようになることで、そのために毎日アプリを開いてもらうことが最重要。そう考えると多少はアイテムで濁しても継続してもらうことを優先した方が良い。運営側の目指すところが明確な気がして、この設計はDuolingoへの信頼感醸成につながった。実際もしアイテムの仕組みがなくて連続記録が途切れてしまったら毎日英語を学習するモチベーションは下がっていたと思う。

AIを使った新興の英会話サービスが生まれてきている中で、DuolingoもAIと英会話を練習する機能を提供してきている。そもそもAIが進化したら英語を学ぶ必要がなくなるという説もあるが、趣味として英語学習は続けていきたい。


No No Girls ファイナルを観た

2025/01/19

毎週楽しみにしていたオーディション番組「No No Girls」の最終審査を収めた回が公開され、デビューするメンバーが決定した。結果には驚いた部分もあったがちゃんみなの選択なら文句はなく、世の中的にも暖かいコメントが多いように見受けられる。番組を通して審査結果は個性の否定ではなくグループの方向性とのマッチングであることが伝え続けられた。そして毎回熱量をもって具体的な言葉でフィードバックしてきたちゃんみなには多くの視聴者がリスペクトを抱いており、最終結果を受け入れやすい雰囲気が情勢されていた。

審査コメントではメンバーとちゃんみなが本気で話し合ってきた時間を想起させた。自分の成長を求めて本気でアドバイスを求め、時には涙しながら努力する。これがプロの姿。新入社員の頃に冗談交じりでプログラマーには「プロ」の文字が入っているからと言ってストイックさを求めていた。今もあの頃のように成長に貪欲に、本気で時間を過ごせているかは考えたい。

No No Girlsはちゃんみなに限らず番組全体としてもとても良くできており、盛り上げるために恣意的に編集する「悪編」がなかった。メンバーのぶつかりや葛藤はもちろんあるが、それは番組が演出したものではなく、参加者が本気で挑戦する過程で内面から滲み出たものが表出していたように感じられた。本物は飾りがなくてもエンターテイメントとして成立する。

昨年話題になったドラマ「海に眠るダイヤモンド」もエンタメとしての上品さを感じた。日曜劇場の枠は半沢直樹に代表されるような急展開、裏切り、勧善懲悪など分かりやすい見せ場を並べたような作品が最近は多かったように思える。海に眠るダイヤモンドは視聴者を惹きつけるための要素はあるが、それに大きく依存したり謎の大きさを作品の魅力にしていない。ある人物とその周辺で起きた物語を丁寧に描写している感じ。事実は小説より奇なりではないが、裏切りや成敗がなくても懸命に生きた人の人生は物語として面白い。


人の話を聞く姿勢

2025/01/18

相手の話の先を先回りして読むクセがある。言いたいことはこういうことかな、と予想しながら聞く。仕事のときは話が早いので良いかもしれないが雑談においてはあまりフィットしない。目的なくただ話をしたいとき、先回りすると逆に話の幅を狭めてしまう。「それってこういうことですよね?」と勝手に要約するのではなく、相手の意見や感想を待ってただ聞き手でいたい。

話を広げる方向も重要。たとえば「最近〇〇という本を読んでいる」という話が出たのに対し、「それ流行ってるよね」と応えてしまうと話題は世間の評判や業界のトレンドに展開される。そうではなく「面白かった?」とか「どういう人にオススメ?」と聞く。相手のことを知りたいのが目的なので、世間一般の評価ではなくその人が何が好きで何でテンションがあがるのかを知りたい。

ユーザーインタビューの作法で「相手になりきれるように聞く」というのがある。たとえばアフリカの街で井戸水を汲む仕事は最初は想像できない。頻度、使う道具、一番大変な作業は何かなどを聞いて解像度をあげ、自身で追体験できるようになるのが良いインタビュー。入り組んだ抽象的な質問は必要ない。当事者であれば絶対答えられる単純な質問を何往復もして理解を深めていく。インタビューに限らず、相手のことを知りたくて聞き手をやるときは意識したい。