作家性を出す

2025/11/14

SNS上の知り合いの方がnoteで「作家性が滲み出るまでプロダクトを磨き込むのが目標」だと書いていて、作家性という言葉は良いなと思った。確かに良いものを作ってるエンジニアのプロダクトには「その人らしさ」がある。それはコンセプトやデザインへのこだわりの一貫性によって生まれている気がする。

ただ、作家性があれば世の中から評価されるかというとそれはまた別な気もする。小説家の中に売れない作家がいるように、独自の芸風はあるが日の目を浴びない芸人がいるように、自分の軸があるのと他者から評価されるのは一致はしてない。

さて、自分はというと、自分の軸を持つことよりは誰かの役に立つものを作っているのが楽しい。でもその課題を「見事に」解決したいモチベーションもあり、そうなると作家性も必要だと思っている。

技術的にはWebでもアプリでもひと通りものは作れるようになってきたが、それはまだ「作れる」レベル。「こだわれる」くらいに技術を伸ばすことは、短期的な目標として掲げてもよさそうだ。


関心のあるテーマでまずはやってみる

2025/11/13

自分で書いた日記をたまに読み返すが、一番読み返してるのは間違いなく2024年8月6日の日記だ。タイトルは『「何を作るか」のアイデアの作り方』で、THINK BIGGER という本の読書メモが書かれている。

アイデアを出すのは簡単で、次の3つを毎日ノートに書き出していく。

  1. 毎日の生活に起こる、解決したい課題を書き出す。苛立たしいもの、解決が待たれる課題はなにか。繰り返し登場するものは何か?
  2. 関心のあるテーマ、詳しく知りたいテーマを書き出す。情熱を持てる課題、課題解決を通じて学びたいことは何か?
  3. 毎日の生活で大切にしていることを書き出す。大切なこと、その時間をもっと充実させる方法はあるか?

これを毎日続けると何度も登場するものが見えてくる。それが自分にとって大事なことなので、それを解決するものを作れば良いというものだ。

実際にやってみるとなかなか面白い。1年前と今とを比べると、書き出されるものが同じだったり違ったりする。最近は2の「関心のあるテーマ、詳しく知りたいテーマ」が重要な気がしてきた。情報や経験がないとその分野の課題を見極めることはできない。なのでまずは関心や興味で入り、実践するなかで業界やその仕事に詳しくなっていけば良い。

例えば保護犬のNPOの手伝いをしたい気持ちがあるが、今時点で何か作ろうとしてもさっぱりアイデアはわかない。これは解像度が低いからで、そういう団体で半年くらい働いたりIT部門の手伝いをしたら見えるものはありそうだ。そういう動きをしてみても面白いかなと最近は考えている。


古いスマホを父にあげた

2025/11/12

今年はiPhoneを新調したので旧モデルを父に譲る。下から上の世代に物を渡すことを「おあがり」と呼ぶらしい。喜んでもらえてうれしいが、合わせて買ったスマホケースのサイズを間違えていて入らなかった。こういう凡ミスには気をつけてるつもりだがゼロにはできないな。

最近はいろいろとアイデアを考えている。探したいのは「あ、それいいね」と誰でも分かるシンプルなアイデア。捻ったコンセプトは一見カッコよく見えるが、実際はユーザーの理解のハードルが高くなってしまって流行らないことが多い。クールじゃなくて良い、ベタで良い。ただあまりにベタだと競合が多過ぎて埋もれてしまうので、ちょうど良くズラすことが知恵をつかう場所になる。

Panasonicの髭剃り「ラムダッシュ パームイン」を買った。以前使っていたBRAUNのもののボタン部分が外れてしまったので。調べてみたらみんなこの現象が起きており、リコール対象ではないかとコメントされていた。パームインは手の平の上に乗る小型の髭剃りで、イヤホンケースのような丸い形をしているのが特徴。使ってみたが見た目はかわいくて剃り心地も良くて満足。出張の機会は減ったのでどうかと思っていたが、普段使いでも十分重宝できそうだ。

仕事終わりに図書館に行って本をドカ読みする。最近は頭の中が整理されてきてまた本が読めるようになってきた。独立系の本屋に行ったのが大きかったかな。選書された本棚から気になる本を選ぶ過程で自分の今の興味が明確化された。移動の時間も増えそうだし、ここから個人的な読書の秋が始まる。


「はじめの一歩を踏み出そう―成功する人たちの起業術」を読んだ

2025/11/11

はじめの一歩を踏み出そう―成功する人たちの起業術」を読んだ。アメリカでは起業した会社の8割は5年後に姿を消しており、それは共通したとある誤りから来ている。本書では著者のこれまでのコンサルティング経験をベースに、事業がどういう形を目指すべきかを提案する。

いきなり結論だが、事業にとって良い状態とは経営者が「起業家」「マネージャー」「職人」の3つをバランスよく発揮できていることである。起業家の要素がないと夢や志を描けない。マネージャーがないと他人に依存したビジネスになる。職人がないと実践が前に進まない。どのピースが欠けても歯車は狂ってしまう。

自分はエンジニアの歴が長いので、この中だと「職人」の気質が一番近いと思う。職人は自分のスキルを発揮して良いものを作れることに喜びを感じる。しかしその視点は常に下から上を見上げる形で、「作ってから考えよう」となって方向性を誤りがちになる。

これにはかなり身に覚えがある。新しいサービスを作ろうとアイデアを考えるとき、市場のリサーチや競合調査などは面倒ですぐに作り始めたくなってしまう。この機能があれば良さそうとか、こういうインタフェースだと使いやすいだろうなとか、具体的なことを考えるのはとても楽しい。それに比べるとリサーチは抽象的で、どこまでいっても明確なことは言えないのでまず作って試した方がいいでしょうと思ってしまう。

しかし実際に作り出すとものづくりは大変で時間がかかる。作りはじめて2ヵ月くらい経つとこのまま進んで良いのか不安になる。不安を感じながらでは実行力が半減してしまうので、最初に方向性やこのサービスで実現したいことを考え抜いておくことは結局スピードの面でも有効なのである。このあたりはサボらず気をつけたい。

サボるでいうと「マネージャー」の部分。人に仕事を依頼するとき、「細かいことは言わないので好きにお願いします」と仕事をパスすることがある。本書によるとこれは一見委譲してるように見えて「丸投げ」の行為に当たる。丸投げは一見信頼に見えるが、実際は細かい役割分担をサボっているに過ぎない。大事な業務を依頼するとき、それが相手のスキルや熱量次第で左右されるのはリスクが大きすぎる。時間を使って業務をコントロールする意識が大事になる。

起業家にとってユーザーは宝の地図になる。ユーザーから新しい要望が届くとそれはチャンスに映る。一方で職人にとってはユーザーは厄介者に見える。それは自分たちの作るものを欲しがらない存在に見えてしまうからだ。「自分が好きなもの作れたらいいや」だと後者のマインドになる。市場で評価されたいものを作るなら、視点を180度変えて挑む必要がある。


ホームランを狙うと空振りしやすくなる

2025/11/10

常識の1ミリ先を考える」を読んだ。ベストセラーをいくつも手がけた編集者の方の本で、ヒットする企画はどういうものかを15の章に分けて語る。キーワードは「盗んでズラす」。0から生み出すのではなく売れてるものの切り口を変えるのは「コピーキャット」のアイデアの作り方を想起させる。

ヒット作を振り返ってみると、ホームラン狙いのものは失敗しやすいことが分かったという。10万部を狙うぞ、と意気込んだ企画は失敗しやすい。これはホームラインを打つことに意識が行き過ぎて目の前のボール(読者)から目を離してしまうことが原因。著者は読者をひとつ広げてクラスタと呼ぶが、この対象となるクラスタを理解し、その人たちの世界観を分かった上でスイングすると打率があがりやすい。

Webサービスでも同じで、世の中を変えるサービスを作る!と始めてしまうと行き詰まりやすい。規模が大き過ぎてイメージしづらいし、自分の考えたアイデアが世界的に流行るかどうかは企画段階ではわからない。InstagramやAirbnbなどの世界的ヒットサービスも最初は小さく始まっている。その界隈の人に火がつき、少しずつ形を変えながら世界に広がっていった。世界を変えるのは結果であって目的ではない。

N1マーケティングでおなじみの西口さんも著書「ブランディングの誤解」の中でマスとニッチの違いについて、課題を解決する商品を作り、その対象者が多ければマスに、少なければニッチになるだけだと書いている。ある村の人だけが使うニッチなアプリを作ったとして、それを周りの市区町村が真似して広がれば徐々にマスに近づく。ある程度市場を見る目は必要として、ニッチになるかマスになるかは結果に委ねられる部分がある。まずは身近な1人、身近なクラスタが欲しがるものを作るところから始めたい。