「ゆっくり、いそげ」を読んだ
「ゆっくり、いそげ」を読んだ。東京は西国分寺駅にあるカフェ「クルミドコーヒー」の店主の方が書かれた本。最近は資本主義の忙しさにストップをかけ、スローペース・マイペースで日々を過ごしたいと思っており、このタイトルが本屋で目にとまって購入した。
著者の方は東大卒、マッキンゼー、ベンチャーキャピタルと経歴を重ねられておりビジネスマンとしても超優秀。資本主義に乗って加速し続けることはやめ、ビジネスとスローライフの中間を目指す。そしてその中間が現実的に可能であることをカフェの営みを通じて理解していく。
例えば「お客さんの消費者的な面」のスイッチを押さない。集客のために広告を出したり20%オフにしたりをやらない。こういう施策は一時的に人を呼ぶかもしれないが、値引きされていない時期を損だと感じ、安く買えた方が良いという思考に一票を入れてしまう。
本書の言葉を借りれば誰もが「消費者的な面」「受贈者的な面」の両方をもっている。お店での時間が豊かになるようにこだわる。それを受け取ったお客さんは払った金額よりも良い対価を受け取ったなと感じ、また訪問したり知人にお店を紹介したりする。これは「ギブ」のループが成り立っている。
経済についての解釈も面白い。著者はもともと「経済的な活動は関係性を壊す」と思っていたという。確かに友人と起業するなという言説はよく聞く気がする。しかしそれは「互いを利用し合う経済活動」の場合の話であって、「互いが互いを支援し合う経済活動」ではむしろ関係性は育っていく。
ここはシビれるものがあった。社会人やってると人脈とか、異業種交流パーティーのような場に参加することもあるが、毎回違和感があった。それは「この人と繋がっておくとどんな良いことがあるか」と測られ、それを受けて「自分のスキルや魅力をアピールしなきゃ」と考えてしまう自分によるモヤモヤだ。いろんな仕事を聞くのは楽しいが、そんなシンプルな会はなかなかない。普通にサラダうまいですねとか言って過ごす飲み会に行きたい。
最後に「時間と戦わない方法」。現代は何も考えずにいると時間と戦ってしまう。より短い時間で大きな成果を。生産性、コスパ、タイパを求める。時間を味方につけるには人間関係をギブから始め、目的や目標を絶対視しないこと。1ヵ月で〇〇を達成する!と目標を置くとその時点から「今」はマイナスになる。それで頑張れる人は良いかもしれないが時間に追われるのは基本的に辛い。しかもそれを達成してもまた次の目標が置かれる。自分が満足できるタイミングがない。目指す先はあってもいいが囚われすぎず、毎日を積み上げていく感覚にする。
最近出張の機会は減ってしまったが、次に東京行くときは西国分寺に行ってみたい。