"伝わる"サービスづくり

2025/06/14

シンプルな機能でも使いづらいサービスがある一方、複雑な機能を備えつつユーザーのやることが明瞭なサービスもある。この違いはチームに良いデザイナーがいるかどうか。良いデザイナーはユーザーの視線の動きまで意識し、どの要素をどこに置けば良いかを熟考して答えを出す。機能一覧表に並べるのなら適当に機能追加すれば良い。しかしこのデザイナーのこだわりが長期的な資産となり、競合との差別化要素となっていく。

良いデザインはどう作るのか?それは何度も何度も「初心者目線」でそのサービスを触ること。初めてそのサイトを訪問したユーザーはどう感じるか?自分の仕事を楽にするためにそのサービスを使っていて、どこで躓くのか?よくある壁としては「ボタンが多すぎてどれを押すべきかわからない」「要素が多すぎて全体像の把握に時間がかかる」「テキストの内容が冗長・不正確で使っていて疲れる」など。こういった課題はユーザーからフィードバックされれば改善できるが、大抵のユーザーは見切りをつけたら何も連絡なく二度と現れない。大企業であれば候補者を集めてユーザーインタビューを実施するところだが、個人開発者やスタートアップにはそんな潤沢な予算はない。やはり大事なのは自分でユーザーになりきること。エンジニアになったり主婦になったり、彼らの気持ちで使えば自ずと改善点は見えてくる。

サービスの領域によっては本当に複雑で初見には絶対理解できない仕様もある。その業界独自の仕組みであったり、高度な権限管理であったり。こういったものをシンプルに出来るとカッコ良いが、無理に処理を隠蔽してシンプルに見せかけても大抵失敗する。元々実現したいことが複雑な場合はユーザーインタフェースも複雑になる。例えばメールアプリでは「宛先」「差出人」「件名」「本文」は絶対に必要だ。これを本文だけで送信できるようにはできない。ユーザーの入力を補助することはできる。宛先を過去の履歴から選べるようにしたり、本文の1行目を自動的に件名にするなど。こういう細やかな工夫は作業を効率化してくれるので歓迎だが、基本的にはユースケースを限定する代わりに便利さを提供している。上記の例では件名は別で入力したいユーザーが多数いて、その人たちにとっては無用な機能になる。

近年、デザインやユーザーに"伝わる"UXライティングなどの分野の注目が高まっている気がする。作れば売れた時代が終わり、今はユーザーに選ばれないと生き残れない時代。初見ユーザーにサービスの魅力をしっかり伝えるために、初心に帰って何度も触るのはとてもオススメの方法です。