「はじめの一歩を踏み出そう―成功する人たちの起業術」を読んだ
「はじめの一歩を踏み出そう―成功する人たちの起業術」を読んだ。アメリカでは起業した会社の8割は5年後に姿を消しており、それは共通したとある誤りから来ている。本書では著者のこれまでのコンサルティング経験をベースに、事業がどういう形を目指すべきかを提案する。
いきなり結論だが、事業にとって良い状態とは経営者が「起業家」「マネージャー」「職人」の3つをバランスよく発揮できていることである。起業家の要素がないと夢や志を描けない。マネージャーがないと他人に依存したビジネスになる。職人がないと実践が前に進まない。どのピースが欠けても歯車は狂ってしまう。
自分はエンジニアの歴が長いので、この中だと「職人」の気質が一番近いと思う。職人は自分のスキルを発揮して良いものを作れることに喜びを感じる。しかしその視点は常に下から上を見上げる形で、「作ってから考えよう」となって方向性を誤りがちになる。
これにはかなり身に覚えがある。新しいサービスを作ろうとアイデアを考えるとき、市場のリサーチや競合調査などは面倒ですぐに作り始めたくなってしまう。この機能があれば良さそうとか、こういうインタフェースだと使いやすいだろうなとか、具体的なことを考えるのはとても楽しい。それに比べるとリサーチは抽象的で、どこまでいっても明確なことは言えないのでまず作って試した方がいいでしょうと思ってしまう。
しかし実際に作り出すとものづくりは大変で時間がかかる。作りはじめて2ヵ月くらい経つとこのまま進んで良いのか不安になる。不安を感じながらでは実行力が半減してしまうので、最初に方向性やこのサービスで実現したいことを考え抜いておくことは結局スピードの面でも有効なのである。このあたりはサボらず気をつけたい。
サボるでいうと「マネージャー」の部分。人に仕事を依頼するとき、「細かいことは言わないので好きにお願いします」と仕事をパスすることがある。本書によるとこれは一見委譲してるように見えて「丸投げ」の行為に当たる。丸投げは一見信頼に見えるが、実際は細かい役割分担をサボっているに過ぎない。大事な業務を依頼するとき、それが相手のスキルや熱量次第で左右されるのはリスクが大きすぎる。時間を使って業務をコントロールする意識が大事になる。
起業家にとってユーザーは宝の地図になる。ユーザーから新しい要望が届くとそれはチャンスに映る。一方で職人にとってはユーザーは厄介者に見える。それは自分たちの作るものを欲しがらない存在に見えてしまうからだ。「自分が好きなもの作れたらいいや」だと後者のマインドになる。市場で評価されたいものを作るなら、視点を180度変えて挑む必要がある。