『「みんなの学校」が教えてくれたこと』を読んだ

2025/08/26

「みんなの学校」が教えてくれたこと』を読んだ。この小学校は大阪に実際にある。そこでは障害のある子もない子も同じ教室で学び、他の小学校で厄介者扱いされていた子も毎日学校に通う。ノンフィクション映画としてもヒットしたらしい。この本はその小学校の初代校長によるもので、大人にとっても大事なことがたくさん書かれていた。

例えば新しい子が転校してくるとき。引き継ぎ情報のようなものは来るがそれを鵜呑みにはしない。それはあくまで前の学校の見立てだとし、先入観なくその子供を自分たちでよく見る。何か問題があったらそれにどう対応すべきか教員みんなで話し合う。大空小学校にはルールはなく、校則は「自分がされていやなことは人にしない」という一つだけ。なので「ルールだから」という呪文は使えず、大人も子供も自分たちで考えて作っていかないといけない。

子供がこの唯一の校則を破ったとき、校長室に来てやりなおしの時間を持つ。やりなおしとは校長先生と話して自分なりにその出来事を理解すること。例えばケンカをして相手を叩いてしまったとする。そうしたら「なんで叩いたの?」「どういう気持ちになった?」「なんで怒ってるの?」などと聞いて自分の感情を振り返る対話が始まる。大事なのは先生側が最後に「よくわかったね。次からはもうしないように」などと言わないこと。この一言があると主従関係が見えてしまう。子供がただ学び、大人はその補助をするくらいでちょうどいい。

学校の授業中は静かに話を聞くのが良い行動とされているが、大空小学校では突然大きな声を出したり学校を脱走したりする子がいる。その子たちは周りの子がそれに過剰に反応するとますます落ち着かない気分になってしまう。大空小ではそんなことがあっても子供達は勉強を続ける。それは例外を無視しているのではなく、「いろんな人がいる」を地でいっているから。大人がいる場なら大変なことにはならないし、大人がいなかったら自分たちで出来ることをしつつ先生を呼びにいく。それは信頼関係ゆえのものだが、これは子供の声を全身全霊で聴いてきた時間によって成り立っている。

後半は著者の方がこういう学校を作りたいと思うようになるまでの経緯が書かれている。教育実習で会った、先生がいなくても自律的に動ける子供たち。実習最後の日のお別れ会を子供たちだけで企画してくれたらしい。水泳の成果をあげようと運動ができる子ばかりをトレーニングしていたら、「底をあげないと後につながらない」と言われたとき。できない人を育てることが結果としてピラミッドの頂を伸ばすことに繋がる。いろんな経験が大空小学校につながっている。

最近は仕事でも「俺についてこい」タイプではなく、よく話を聞くタイプのリーダーシップが求められている。自律的に動けるチームは強い。そのためには一人一人を信じ、話を前傾姿勢で聴く態度がまず必要だ。そして正解を決めつけないこと。正解があるような雰囲気では「正解じゃない」とされる側はどんどん発言しにくくなってしまう。突飛な発言や行動があっても否定しない。そういう雰囲気が大人の社会にもあればもっと生きやすくなる。