作っているのは薬かサプリか

2025/07/01

ヤフーで働いていた頃に社内スタートアップ企画があり、何人かでチームを作ってアイデアを練り応募した。プレゼンが終わると投資家の方から色々アドバイスをもらうのだが、そこで言われたのが薬とサプリの違い。サプリは元々正常な状態にアドオンする「あったらよいもの」、薬は困っている何かを「治すもの」。サプリ的なWebサービスは流行らせるのが難しい。ユーザーが今すでに困っていて、お金を払ってでも解決したい問題を解決しましょう、という主旨の喩えだ。ケツに火がついている顧客を探せという意味で、バーニングニーズと呼ぶこともある。

例えばアプリの品質が遅くて困っている会社があるとする。その会社向けに自動でバグがないかチェックしてくれるツールを売る。品質の担当者からすれば喉から手が出るほど欲しいはずだ。そこで導入し、一定の成果が出ると次々と機能の要望を出す。それに応えてツールを磨いていくと強化される。ここでふと周りを見渡すと同じように品質に困ってる会社が他にもたくさんあることに気づく。同じ課題をたくさんの人が抱えているほど市場が大きくスケールしやすい。同じ課題感をもっている担当者同士はつながっていることが多いので、良いサービスはクチコミで少しずつ広がっていく。

「薬を作りましょう」というのは正しそうに見えるが、最近は少し景色が違ってきたようにも思う。いろんな便利なサービスが提供されたことで大きな課題はそれなりに解決されており、課題を探して見つかるのはとても小さなものになる(その会社特化のニッチな課題など)。IT市場が成熟しつつあるといえるのかもしれない。しかしそんな中で新たに流行るサービスもあり、そういうものはどれも「なんとなくカンジがいい」気がする。他ツールよりも使いやすいとか、ちょっとした特徴があって気に入られてるとか、社会的に良いストーリーがあるとか。課題解決は必要だが、それに加えて何かもう一つ特別なものが求められる。薬に加えてサプリの効果も合わせて必要になってるのかもしれない。