人の話を聞く方法
新卒で入った会社では若手が新卒採用のリクルーターをやることが多く、その前にはリクルーター研修というものを受けていた。外部から人材マネージメントのエキスパートなる人を呼んで会議室でワークショップをする。2時間ほどレッスンした後、講師の人は「結局『私はあなたの話を聞きたいです』という姿勢を示すことが大事」と言って締めていた。
オープンクエスチョンで会話を広げる、最初はYes/Noで答えられる質問にして安心感を醸成するなど細かいテクニックはいろいろあるが、結局信頼は自分とその人の時間への向き合い方によって作られる。悪い例だと1on1で部下の話を聞く時にパソコンを見ながら作業片手間にやってる場合、この上司に心から話したいことは相談できない。仕事じゃなくてプライベートでも同じ。友人や家族と真剣な話をするときはスマホは見てはいけない。
全身全霊をもって相手に注意を払う。話したいことは何なのか、次に続く言葉は何なのか、どういう感情でそれを口にしているのか?相手の話の途中で遮ってはいけない。すべてを話してもらって受け止める。相手の話を加速させるための相槌や質問なら良い。自分の話を挟むのは最悪で、否定でもアドバイスでも等しく相手の言葉の流れを堰き止めてしまう結果になる。
大体の場合においてアドバイスできることなどない。そうではなくいったんすべてを聞くことが大事。解決策がなくてもいい。すべて吐き出すことで問題が言語化されて楽になる、それだけで十分。自分の知見や経験を話すのはすべて聞いた後が良い。自分のことを全て話せた相談者は気持ちが楽になり、最後まで本気で聞いてくれた相手への信頼関係が生まれている。この状態なら出てくるアドバイスを受け入れる余白ができている。「こうしたらいいよ」という情報自体はネット上に溢れている。大事なのはそういう汎用的なものではなく、自分が話して相手が聞いた、つまり2人で集中して時間を過ごしたという個人的な経験である。そういう時間の積み重ねで信頼関係が大きくなる。より相手に本音を喋れるようになっていく。全員にこれをするのは難しいが、大切な家族や友人にはこの姿勢で向き合いたい。