黎明期はコミュニティや勉強会が大事
iPhoneアプリを作るエンジニアをしていた頃、よく社外の勉強会に参加していた。クックパッドやマネーフォワードなどの会社がオフィスを提供してくれてテーマや分野ごとの勉強会を開く。参加者は発表したりそれを聞いたり、終わった後に感想を言い合ったりして交流する。無料で参加できるのになぜかご飯が出る。これはオフィスにきてもらって良い時間を過ごしてもらうことが長い意味で採用に効くからで、お酒やご飯を片手にした技術交流はオフラインならではの魅力になる。
iPhoneに次々と新機能が出ている頃、勉強会は最盛期を迎えていた。新しい機能はどういうものなのか、その実用例などが語られて質問が飛び交う。2010年代後半になるとiPhoneにそこまで目立った機能追加はなく、カメラのアップデートのような基本機能の改善が主となる。そうなるとエンジニア的にはそこまで話すことはない。プログラミング言語や設計方法などの議論はあったが、情報共有が目的であればオンラインでもある程度は賄える感じもあり、オフライン勉強会の盛り上がりは落ち着いていった。自分も関西に引っ越して来て勉強会の数はばったり減ったがあまり不便だとは感じていなかった。
ところが最近AIの勉強会が活発になってきていて、これには非常に参加したい。なんというか会場に熱がある気がする。それはインターネットが出たての頃のような、iPhoneが発売されてモバイル端末が普及していく変革期のようなムード。そういうタイミングではネット上には濃度の高い情報は出ていない、もしくは出ていても整理されておらず見つけにくい。良い情報は熱意ある人たちのクチコミで広がっている。自分が見たり聞いたりしたことを文字や音声で残すのはそれなりに労力がいる。10経験して1が語られる。残りの9はインターネットには発信されない。それは試したけど動かなかったとか、期待外れで魅力を感じなかったなどの曖昧な情報かもしれない。しかしそれを知っていると自分が進む方向を間違えにくくなる。そういった閾値を超えてこない情報を拾えるのは雑談しかない。別に言わなくても良いけどこの場でなら話しても良いか、という気軽さがイノベーションを生む。いま久しぶりにオフライン勉強会に参加したくなっている。