「ikuzine」を読んだ

2025/11/19

ikuzine」を読んだ。その名の通り「育児のZINE」で、著者は友人のヤマダさん。内容はPodcast番組の文字起こしになっていて、参加者それぞれの育児に対する考え方やモヤモヤが読めてとても面白かった。

参加者の中には小説家の滝口悠生さんがいる。滝口さんの表現には心を掴まれることが多かったので書いておきたい。

例えば電車で子供が静かに過ごせたとき、親は「えらかったね」と褒める。しかし静かにしていて嬉しかったのは親目線であって、それを「えらい」と言ってしまうと親の都合すぎるところがある。なので滝口さんは「静かにしてくれて助かりました。感謝してます」と伝える。この表現であれば立場がフラットなまま子供を褒められていて心地よい。

そして子供の可能性の話。子供が何かに触れる機会は、ある程度は親側が用意しないといけない。例えばバイオリンの才能が実はめっちゃあったとして、バイオリンに触れる機会がそもそもないと才能に気づけずにチャンスを逸してしまう。しかし、かといって習い事ばかりで時間を埋めてしまうのも健全とはいえない。ではどうするか?

子供と触れ合う時間を多くして、子が何に興味を持つのか、何にどんな反応をするのかをよく観察することが一種の代替案といえる。子供が出すサインを見逃さないように観察する。最近は大人の社会でも「話すよりも聞くスキルが大事」という流れがあると思うが、子供とでもそれは一緒なのかもしれない。相手に自分の意識を向けて全力で聞くようにしたい。

滝口さんのパンチラインばかり紹介する形になってしまったが、他の参加者の方のやり取りも面白い。「子育てに正解はない」という言葉を聞いたことがあるが、各々のやり方や悩みをテーブルに置き、「それは全然良いんじゃない?」「それはこういうやり方もできるかもね」と会話する。家族という存在は閉鎖的になりがちだと思うので、こうやって気楽に話せる場があるのはとても良い気がする。そしてその会話をカフェの隣の席で聞かせてもらってるような感覚になった。

自分はメルカリShopで「DX版」を買ったが、そうすると著者の子育て日記が番外編としてついてくる。これも面白かった。子供とのやり取りがリアルに記録されているのだが、そこに出てくる子供の発言が大人の自分には出せない視点で心を打たれた。そして些細な日常の会話は普通だと忘れてしまうと思うので、日記に残して読み返せる面白さにも改めて気づかされました。

11/23(日)に東京で開催される文学フリマ41にも出店されるようなので、もし参加される方はのぞいてみてください!